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Kindle Kid’s Book Creator (KKBC) 感想

 アマゾン様が Kindle Kid's Book Creator (以下KKBC) を出してきました。児童書・絵本を作る便利ソフトという触れ込みです。おぅ。絵本。国会図書館の画像データを加工して電子書籍の復刻書をつくっている身としては興味津々です。今まで Kindle Comic Creator (以下KC2) をつかってある程度mobiファイルの骨組つくりをしてました。KC2は目次作りに便利です。
 では KKBC の生成物は KC2 の生成物と何が違うのか。「テキストポップアップ」とかいうのが違うとのこと。ふーむ。使えると便利そう。江戸時代の本のテキスト起こしとか漢籍の注とか画集の絵の題とか、応用はいろいろ思いつく。技術的にはどうやってテキストポップアップを表現しているのか。なにしろ Kindle電子書籍は所詮は貧弱なHTMLでしかないわけで、そこをどうしているのか興味のあるところです。ということで、とりあえず見本をつくってみました。今までつくってきた復刻書はいうならば絵本なわけで、データはそのままつかえます。以下感想。

 Chinese があったのだが、試してみても、英語との違いがわからない。ので英語でいいのではなかろうか。後述するように日本語の入力はできる。

  • ページの名前はPage-1、2...がデフォルトで、それ以外の名前(たとえば目次とか第一章とか)を設定できない

 KC2ではページを見ながらページ名を入力できるのが便利で、それで目次作成できたのにKKBCでは編集できなくなっているのは不満点

  • テキストポップアップの作り方は四角い領域を選んでそこに文字を与える。あと同じ要領で絵の上からテキストを入れることもできる。

 ここが KKBC のミソらしい。なかなか便利だが KKBC では英語でも Chinese でも縦書きはできない。だから日本語版がないのか。ちなみに英語でもテキストポップアップに日本語を入力するのは問題ない。さらに、無理矢理縦書きにすることもできる。そのやりかたは後述する。画像の上からテキストを入れることができるのはおもしろい。 KC2 の方式では文字を画像化するしかなかったので容量が無駄だった。領域は四角しか設定できない。凸形みたいな多角形が選択できるといいがちと面倒か。テキストを入れたところは同時にテキストポップアップもできるようになっていてそれをさらに分離することもできるようだ。

  • Previewer でテキストポップアップが確認できる。

 Previewer で確認すると、テキストポップアップをしこんだところを押すと相当でかい白地の四角がでてきてその中に横書きで入力したとおりの字がでてきます。

 なるほどなかなかおもしろい。では技術的にはどうやってテキストポップアップなり画像上の文字を実現しているのであろうか。html をみてみると、予想通りというか何というか、div と css で実現していた。KC2 なら html に img ほりこんで終わりのところ、KKBC では html には div とテキストだけ与え、画像のリンクとか四角の位置とかは css で指定。ポップアップは Kindle の内部処理でやってるのかそれ以上の記述はみあたらないが Javascript でも使っているのか。絵の上のテキストとテキストポップアップはもともとひとセットのものらしく、テキストポップアップは最初からテキストdiv のテキストがないだけのようだ。なるほど。この点は KKBC の方が進歩している。まぁしかし複雑なことをすると重くなりそうだな。
 そういうことであれば、縦書き問題は縦書きの css を手書きで与えればよいのではないか? 全体の css は html/amzn-ke-style-template.css に集約されている。body、div に一律スタイルを適用しているところがあるのでそこに縦書きの指定をさしこんで Previewer で mobi を作りなおしてみるが変化なし。再度 KKBC で開くとなぜか横向きの縦書きになっている。ともかく縦書きのスタイルが効いているようなので保存してまた mobi を作ってみると見事縦書きになっていた。ただしそれだと左始まりのままなので、右始まりにするべく、content.opf の中の primary-writing-mode を horizontal-rl にしてみるが、右始まりにならない。それで同様に KKBC で開いてそこから Previewer に渡すとできた。KC2 で目次を編集したらとりあえず出力させないといけないのと同じような現象かもしれない。

 KKBC で遺憾なのは赤で強調したように目次の編集ができないことだ。とにかく、画像だけの本はテキスト検索できないので、古い技術である目次の構築が命になる。KC2 は見ながら目次を作成できたので非常に重宝していたのだが、KKBC でつくった content.opf は KC2 で開くことができず、目次入力エディタとして KC2 をつかうこともできない。あと電子書籍の言語に日本語がないせいか、日本語的書式の縦書きとか右始まりに対応していないし、縦向きの本は縦向きにロックされたものしかつくれない。(縦向きロックをはずすのは縦書き右始まりとおなじように手でなんとかできるかもしれないが見開きの右左の指定が作業量多いのでやめた)。ただ日本語対応は内部的にはできているので、あとはソフトのフロントエンドの問題だろう。おそらく広い英語市場向けの仕様を優先して開発し、その仕様を満たしたから公開されたのだろう。そのうち日本語的仕様もできるのではなかろうか(希望的観測)。横書きの本をつくるのは問題ない。

 最初はですます調で始めたのにいつのまにか固くなっているのは気にしないでください。フォントの指定とかはだれかが書くだろう。また一銭にもならないことに時間を費してしまった...
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