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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

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君見ずや出版
今週は2冊。いろいろ関係ないことをやってたからこれでも多い方か。


百鬼夜行絵巻 国会図書館所蔵「亥」本「す」本』
 百鬼夜行絵巻は室町時代から明治大正のころまで絵師たちによって模写されつづけていた絵巻物。最初に誰が描いたのかもはっきりしていない。無数の器物が夜になると化け物となって徘徊し..という様を絵巻にしたてたもので、代表的なのが真珠庵本というものであるが、異本が無数にあり、国会図書館には「亥」本と「す」本というのが入っている。この「亥」とか「す」とかいうのは国会図書館の所蔵の分類の配列の名前でその順番の分類に入っていただけで特に意味はない。両方とも江戸時代中期の模写のように書いてあるがよくわからない。「亥」本は真珠庵系統のオーソドックスな百鬼夜行絵巻で、絵師の手もなかなか慣れたもの。「す」本は百鬼夜行絵巻の中では異色で、詞書がついており、平家滅亡後の福原の御所跡で器物が云々というストーリーが書かれている。絵は丁寧に書かれているがちょっと残念な感じ。
 最近小松和彦氏が世界中の百鬼夜行絵巻を画像であつめて分析して通説を書きかえたりしたが、未だによくわかっていない事が多い。まぁ多すぎるのと絵巻物の中ではキワモノになるのでそんなに研究されていないだけだろう。小松氏の研究のあと、情報学の手法を導入し、画像の配列に注目して分析したとかいう論文があるが、オーソドックスな分析手法を情報学の手法で大袈裟にやってみせたというものだった。これを作るときに参考にはしたが、情報学の手法を導入せずとも普通にやればもっといくらでも情報を引き出せるとおもう。もったいない。

 教育總監部『「ノモンハン」事件小戦例集』昭和16年(1941)
 昭和14年(1939)のノモンハン事件の戦闘指揮の記録を50例集めたもの。成功例だけではなく、失敗例ものっていておもしろい。「優勢ナル敵機甲部隊」というのが何回もでてくるあたり、ジューコフの八月攻勢のすごさがよくわかる。
 表紙に使ったのは「第十四 防禦セル中隊損害極メテ大ナルモ斷乎トシテ陣地ヲ固守セル戰例」の図だが、この中隊は完全に包囲され、指揮官も続々と死んでしまい、最後には兵だけで死守したというもので、これ敵がひきあげたのは反撃能力を完全に失なったからじゃないかとおもわないでもない。
 ノモノハン事件はよく話題に挙げられるが、この本からはノモンハン事件の悪条件下で兵たちが如何に戦ったかの一斑が伺える。附録として2012年9月頃中国側からノモンハンに行ったときの写真をすこしのせた。
 (『「ノモンハン」事件小戦例集』であるべきところを『「ノモンハン事件」小戦例集』としていたので訂正して再出版した。表示されている表紙もそのうち切りかわるはず)