メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

新刊案内

君見ずや出版  今週は四冊も出してるのか。多いな。


中野逍遥『逍遥遺稿』明治28年(1895)

 こないだ四国で宇和島に行ったとき、宇和島出身者の展示でこの人の漢詩が紹介されていたのが気になって出しました。清後期とか民国くらい時代が近い中国っぽい漢詩だとはおもってたけど、実際に清朝人の張滋昉が東大に来てて漢文学を指導してたとは知らんかった。中野逍遥は夏目漱石とか正岡子規とか南方熊楠とかと同窓のあの年代で、漢文科にすすんで研究科まで行ったが在学中になくなり、同学がその死を惜しんで集めた詩集。外編の恋愛詩が有名です。制作順にならんでるのでどうしても後ろの方、つまり外編の方が出来がいいですね。漢字のよめるかたどうぞ。


渡正元『巴里籠城日誌』大正3(1914) [KDP]渡正元『巴里籠城日誌』とパリコミューン - メモ@inudaisho

 こっちに書いたのでいいかとはおもいつつ今週出したので報告。パリ留学中、普仏戦争にかちあった作者がパリ籠城中、フランス中からパリに集まってくる情報を詳細に記録したもので、観戦武官の大山巌らに渡され、それが日本ですぐ出版された。その後第一次世界大戦の勃発にともない活字化されたもの。世界近現代史の中での日本の発展に強い影響を与えた普仏戦争に立ち合ったという点でものすごく重要な意味があります。まぁ左巻きの人はパリコミューンにしか興味ないかもしれませんが。

 あとこれは写真を交ぜるという裏技でむりやりKindleセレクトに入れてみました。どうなることか。


 井原西鶴好色一代男 1 崩し字解読』

 崩し字解読シリーズです。井原西鶴です。底本にした本は影印本も翻刻も両方発禁処分でした。江戸時代の版本もあったんですがちょっと刷りがわるいものであんまりできあがりがよくなく、一度つくってボツにしました。これ、売れ行きよければ続き作るけどどうなんだろう。せっかくちょいエロで攻めてみたのに。国会図書館デジコレには斯道三部書程度のお上品なエロならあるけど「あゝ」とか「ふん」とか書いてあるもっとエグいのはないのでこの路線でエロで稼ぐというのは無理だな...

 ところでこれをつくりながらはじめて井原西鶴好色一代男読んでみたんですが、内容が社会の裏側なのでおもしろい。今ならマンガで扱われるような世界。浮世草子とか言われてそれまでの文学と一線を画したというのもわかります。世之介は女も男も両方行ける口だったようで、その道の味を知ってからは、行く先々でそういう場所を開発しつくしてたということです。つーか予想以上にホモの出番が多かったのはまだ20歳までだからだろうか。


和田和義『暗黒街往来 隠語・符牒辞典』昭和11年(1936)

 『香具師奥義書』で有名な和田和義がつくった隠語集の小冊子。どうも駅売りしてたようで、電車にのったときのヒマつぶしにちょうどよいということかもしれません。この中には結構知られているものもまじってます。昭和11年だからそのころの言葉がメディアの中で固定されて残ってるんでしょうな。