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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

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 君見ずや出版

 今週は東京へ仕事しに来ていて作ってないが先週つくったのが一冊でている。


 成島司直・尾形月耕『改正三河風土記

 徳川家創業史を扱った軍記物のようなもの。家康およびその家臣団の井伊酒井本多の活躍が記述の中心。もともと家康の直臣・平岩親吉による『三河風土記』という体裁で流布していたものがあったが、これを成島司直が各種資料を参照して作りなおしたもの。成島によると平岩親吉が作ったにしては内容がおかしいところが何箇所もあり、江戸前期に仕官を狙った京都の人がその先祖の事績を偽造するために何種類もつくったものの一つであるという。成島は徳川実紀の編纂にもかかわっており、これも幕命でつくったらしい。

 底本には早稲田大学出版部による一般向けの翻刻をつかったが、明治19年に史籍集覧の近藤瓶城によって出版されたものの分版(金松堂)がでており、それに尾形月耕の挿絵がついていたのでそれも適宜抽出して差しこんだ。早稲田大学出版部のこの通俗シリーズは明治に活字化されたものを拝借してることが多く、三河風土記も近藤瓶城のものを流用しているようである。明治の本は活字でもひらがなの異体字がのこっておりそのまま出して現代人に読みこなせるものではないので、ひらがなが正規化された大正以降の翻刻はありがたい。