メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

銃剣道

 国会図書館デジコレには銃剣道の本が二冊ある。裁定公開なので売り物にはできない。著者の塩原庫三について調べたことがあったがそのときは没年がわからなかった。
国立国会図書館デジタルコレクション - 銃剣道 塩原庫三、昭和17(1942)、アルス
国立国会図書館デジタルコレクション - 銃剣道 塩原庫三、昭和18(1943)、帝国在郷軍人会大阪支部

 銃剣というと銃に着剣して白兵戦闘するイメージしかないかもしれないが、西洋軍事史的には歩兵ユニットが真に独立して活動できるようになった画期的な技術である。中世的な騎兵の活躍は火器の登場によっていささか翳りをみせたが、しかしいきなり騎兵の実用性が失われたのでもなかった。当時(16-17世紀)の銃は火縄銃か火縄銃に毛の生えたようなものだったから、単独でつかってもそれほど効果はなく、密集して銃弾の密度(つまり弾幕)を上げる必要があった。火縄銃(マッチロック)にくらべると精度の低いフリントロックが採用されるようになるのもそのためで、照準の正確さよりも連続で打てる速度が重要だったのだ。しかしいくらがんばったところで横から騎兵が突撃してくればおわりである。ということで騎兵の突撃にそなえる槍兵とのセットになるだがそうなると運用や運動が難しい。
 そこで、とりはずしのできるとんがった長いものを銃につけることが考案されたのが銃剣の始まりである。銃は鉄の筒だから槍のかわりにもなるというわけだ。これによって歩兵の運用がシンプルになり騎兵の優越は消滅する。歩兵を主に構成していた平民が騎兵を主に構成していた貴族と肩を並べる社会が到来することになるのだが、また同時にこの技術によって他の世界の兵種ともなんとかやりあえるようにもなる。大航海時代からは海運・海戦技術の向上で海運ルートの確保はできたものの、内陸部へは進出できなかったのが、歩兵の運用技術の向上と砲兵の火力によって内陸部の恐しい騎兵をなんとかやっつけることができるようになったのだ。市民社会の到来と対外進出は同じ技術の上になりたつものであることがおもしろい。

 まぁしかしこれだけ火器の発達した現代で銃剣道という個人的武術が役にたつ局面があるんだろうか。いちいちやることがアナクロだ。どうせやるなら中国のように軍事訓練を授業にとり入れればよいのでは。学校対決の戦争ごっことかおもしろそうだ。たぶんスマホが重要な武器になるとおもう。

(20170402追記)
 銃剣道報道に騙された
 なんだ。バカバカしい。印象操作報道の最たるものだな。銃剣道が指導要領から外されそうになったが元自衛隊の佐藤議員がゴネて今回もなんとか残ったというだけの話だから、それだけでも難癖つけれそうなものなのに、わざわざこういうことするんだからどうかしてる。
(20170404追記)
全文表示 | 銃剣道は本当に「追加」された? 現行の学習指導要領でも実は... : J-CASTニュース