メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

宮内庁書陵部・岩瀬文庫・国文学研究資料館 で古書を眺めたこと

偽書の収集

 今ちょっと、資料的価値が非常に低いある偽書を集めている。偽書といっても一人の人物が一時につくったものではなく、たくさんの人物がかかわっているようで、地域的に大きくバージョンが分かれたりするのだが、目的としては由緒を飾るための補助につかわれていたようだ。さてその偽書の最終段階、つまり由緒が意味をもっていた時代の終わりのころに成立したバージョンには、どうもうちの先祖が一枚噛んでいるような形跡があるのだ。悪いことにはその最終バージョンが活字化されているので、完全に忘れさられるということにはならないようだ。

 さて前にも書いたように、うちの蔵の中にはいって系図類を盗んだ連中がいる。ただの物盗りで盗ったはいいものの使えないので捨てられたのかもしれないのだが、今でもその偽書が作った幻想がどこかで生きているのかもしれない。そういうバカげた幻想を完全に潰し、盗まれた系図(ある程度より昔は捏造)を無意味なものにするためにきっちり調べてやろうというわけだ。そもそも百姓身分のものの持つ系図などというのは、江戸時代に帯刀身分を得ようとするときに「筋目の者」であることを証明するために作られたもの、つまり政治的な必要で捏造されたものなのだが、時代の必要がなくなるとそういうことも忘れられ、系図を真に受ける奴ばかりになるわけだ。それはさておき、明治のころは偽書っぽいとは知りつつもつい蔵書してしまうところもあったようで、写本が全国数カ所に残っている。そこを訪問したことを書いていく

岩瀬文庫

 岩瀬文庫は愛知県西尾市にあり、実業家岩瀬弥助が集めた古書がベースとなった図書館となっていたが、今は「古書の博物館」として図書館とは別に公開されている。

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岩瀬文庫

 コピーして綴じたものが外に置いてあり、随意にみれるのがよい。しかし、今集めているのは資料的価値の非常に低い偽書なので複製のもととなるマイクロの撮影なんかを過去にした人間はいない。マイクロの撮影が過去にあると、その複写がかんたんにできる。ない場合、マイクロの撮影から手順がはじまり複製物が手元に入るのは数週間後。今集めているのは偽書でそこまでする値打ちもない。ということで実物を出してもらって備え付けの鉛筆で筆写するという原始的な作業をした。一日半かかった。

 下に休憩スペースがあってコーヒー程度なら飲める。弁当を食うならそこがよいようだ。昼飯を食おうとしてないので周りにあるかどうかわからない。車社会なので車で行くと便利。

 岩瀬文庫はなんというか全体にゆるい感じがあった。地方自治体の文化施設って学芸員と一部の物好き公務員以外はどうしようもない奴が配置されるという先入観があるので、一ヶ月くらい通えばどうでもいい情報が集まってそこそこ楽しめたかもしれない(ゲス顔で)

宮内庁書陵部

 宮内庁書陵部江戸城本丸跡の一角にある。ここに入るときは希望の10日前に申請して紹介状をもらい、当日は北の丸方面の門から入って特別なバッジをもらい、インターホンで訪問の旨を告げて予約を確認し、入れてもらう。

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宮内庁書陵部

 縛りはキツいけど古文書が目的なので、入ってしまえばそれなりに融通は効くようだった。まぁ天皇がらみとなるとキチガイがいっぱいあつまってきて大変なのだろう。書陵部に行く前にネットで情報を探してみたが、今いる皇族の記録を公開しろとか閲覧してるとか書いてるようなのしかみつからない。シャツに短パン・ゴム草履という非常にラフな格好で行ったので最初はガチガチに監視されていちいち注意されていたが素直に従うのでそのうち何も言われなくなった。たぶんどうしようもないキチガイの方が多くて大変だから普通にしてれば格好なんか問題ないんだろう。

 さてここも岩瀬文庫とおなじで、複写はマイクロの撮影からはいるのだが、できあがりに一ヶ月かかるとかいうことでしょうがないのでここでも鉛筆で筆写した。一日半かかった。まぁ筆写すると同時に読むことになるのでわるいことばかりではないからいいものの、書陵部はケシゴム不可。こういうものを筆写するときは各行の体裁を合わせて書きうつすことになるが、消しゴムつかえないので間違えたり錯簡したりすると修正がつらい。慣れるまで時間かかった。

 食堂はあるらしいが時間がもったいないので行ってない。

国文学研究資料館

 国文学研究資料館は東京の西側の立川にある。米軍基地の跡地につくられた各種公共施設の中の学術系施設に入居している形のようだ。

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国文学研究資料館

 ここは日本中から国文学に関するマイクロフィルムなんかを収集していてそれを閲覧できる。一部は紙で焼いたものを開架に並べてあってそれだけ眺めているだけでもなかなかよい。今集めている偽書も運よくその中にあった。最初は知らずにマイクロを出してもらって眺めていたのだが、見ているうちに気分悪くなってやめてしまった。マイクロの臭いと横移動で酔ったのかと思ったのだが、後日また来て紙を眺めているとそのときほどではないにしてもなんか気分悪くなったので、人の気分を悪くするなにかがあるのかもしれない。まぁもしくは自分の体調がよくないか。

 ここは周りに飯を食うところがないが、当然ながら研究員や職員がいっぱいいるので、そういう人たちを目当てにして共同施設の広場で弁当を売りに来る。500円前後でそれなりに食えるので飯の心配はしなくてよい。

国会図書館 古典籍資料室

 おまけで国会図書館のことも書いとくと、古典籍資料室というのがあってマイクロフィルムをみることができる。国会図書館のマイクロは物理的装置+ソフト処理という手順でみることになるのだが、コニカミノルタのつくったこのソフトがなんというか閲覧向きではない。フィルムをちょっと動かすといちいち焦点合わせからやりなおすのでその都度時間がかかる。これ、精細な撮影をするのが目的でソフトの動作が設計されているからだとおもうがとにかくイライラする。ただまぁ悪いことばかりでもなく、自分で画像を切り抜いて、PDFを作成してそれを出力するという手順なのでほかのところでマイクロを複写するよりは安くでできる。ちょっとイライラするだけで安くなると思えばいいのか。ただし出力はなんか解像度低いような気がする。70枚くらいで1000円程度。A3で1枚に4( 禁則事項です )

 あとかなりどうでもいいことだが、国会図書館はちょっと特別で人が少ない閲覧室に行くと、どういうわけか、なんかキワどい服装をしているねーちゃんがいることが多い。ゲスな発想しかしない自分としては、こういう人目につかないところでヒマなときに火遊びでもしてるのかなと思ったりする。たぶん関係部署の人間が少ないので狭い世界でオシャレがエスカレートしてるだけなんだろうな。私服勤務をやめて作業服で出納してればいいとおもうんだが。

宮内庁書陵部 書庫渉獵―書写と装訂

宮内庁書陵部 書庫渉獵―書写と装訂