メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

中国の古籍共享サイトの消滅

胡錦濤時代の楽園

 2000年代後半には中国にもインターネットの普及がすさまじく、またシェアの文化がもともと中国にもあるそれにうまくハマって大量のアングラサイトがうまれたのだが、その中に古籍を共享シェアするサイトが複数あった。四部叢刊や続修四庫全書のような大型叢書から古本小説集成のような専門叢書、特殊な地方志から民国・文革期の「政治敏感」なものまでいろんな本が大量に流通して一種の楽園になっていた。今ネットにころがっている中国の古籍はこの胡錦濤時代の後半に流出したものが多い。

習近平時代の締め付け

 ところが習近平時代になって、アングラサイトへの締め付けが行われ、サイト間の整理が急速に進んだ。まぁ著作権無視が世界的に問題視されたというのもあるのだろうが、「政治敏感」な書籍の流通を管理したかったというのもあるんだろう。古籍だけでなくあらゆるファイルが流通していた新浪共享は一時閉鎖においこまれ、そのあおりをくらって群小古籍共享サイトへの古籍流出もストップしてしまい一時下火になった。

 自分もそのころ中国が旅行しづらくなったのと、インド北西部方面に興味がわいてきたのでそっちに活動を移して中国のことはあんまり触れなくなっていた。

まだ生きていた古籍共享サイト

 ところが去年(2019)の年末に再度中国のことをやろうとし、そういえばその昔いろいろ本をあつめていたところはどうなったかなと調べてみると、より学術的な臭いの強い古籍共享サイトは習時代初頭から数年の締め付けを生きのびて活動を再開していた。

 まぁもちろんネット全体の趨勢としては無料で共享する方向から広告で稼いだり小銭を要求する方向に変わって簡単にダウンロードできなくなっていたのだが、古式ゆかしき共享サイトも復活していて新たなネタを提供していたので、こういうお勉強的な方面が緩いのはさすが中国だなと感心したことがある。

米中争覇の時代で再度締め付け強化

 しかし去年からの米中貿易戦争の激化がさらにコロナの防疫戦争に発展し、英米系の敵意がちょっとやばいレベルにあがってきたせいか、いままでお目こぼしされていた古籍共享サイトも「政治敏感」で閉鎖を余儀なくされるようになってしまった。

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某サイトの板閉鎖通知

 ↑ここはダベり板の閉鎖で逃げようとしているけれども、既に新しいドメインに移行しているし、中国がさらに追いこまれるとこういうのが生きのびていけるともおもえない。ここはちょっとダウンロードしにくい仕掛けがあるのでまだ死んでいないともおもえるのだが、実際に学術向けにデータを販売してるような会社がその足元で開いていたダウンロードし放題の優良共享掲示板はもう消滅してしまった。最近の中国の本は高いしCNKIも課金しないとみれないしでなかなか思うように行かない。

ちなみに

 大型叢書類は結構 wikicommons に流れているので中国の掲示板類がつぶれてもある程度のことはそれでできるとおもう。ちなみにインドでも電子化された本が公開されていたのがなぜか潰されて、なぜかそのデータが archive.org で公開されてたりする。ちなみに archive.org はイスラム関係の本の流通の一拠点になってる面もあってたぶん過激派の交流場所になってる気がするが、手入れはしてもそういう場を潰さないのが英米系の強みで、だから二枚舌とかダブルスタンダードとかなんとか言われようがその方向へ文物が流れていくんだろうな。その強みもフリーライダーの増加する中でいつまで維持できるのかわからんが。