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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

YOTA3 か YotaPhone3 か。ロシア情報

 Yota3(YotaPhon3)について、ロシア側からの公式な発表があった。

Ростех :: Новости :: В Пекине состоялась презентация YotaPhone третьего поколения

Wall | VK

 特に興味を惹く点は名称について。YOTA3 になったという報道が6月ごろあったが、今回の発表によると、

YOTA3 は中国市場向け、ロシアなど中国以外では YotaPhone3 のブランドでいく

 ということでわざわざ YOTA3 と呼ぶ必要もなさそうだ。これからの予定については

  • 2017/9/5 先行予約受付開始(京東 JD.com)
  • 2017/9/18 発売開始
  • ロシアでの発売は年末

 中国市場で今年度内に百万台以上の出荷を見込んでいるらしい。

 この露中合弁の事業についてだが、ロシアと中国両国の100人以上のスペシャリストが集結して作ったと書いてあるのでなかなかおもしろい具合ではある。具体的なスペックは京東(JD.com)での公開を待った方が確実だろうが、上記情報源で今までと少し違うのはバッテリーの容量が3200mAh → 3300mAhというところだろうか。

 コンセプトについては、若者と読書層を狙ったものらしい。ということで、2017/08/23 の速報にもあったように電子書籍プラットホーム各社がYotaPhone3 向けのアプリを提供するらしい。

 以上。

CLEARink

 今年登場した新しい電子ペーパー技術として CLEARink というのがあるらしい。

www.youtube.com

 eInk との違いとしては、eInk は白と黒の粒子を操作するが CLEARink は黒の粒子だけをつかうという点。白はどうやって実現するか、というと反射光をつかうという。今までのLCD(液晶ディスプレイ)の技術の延長上なので低コストで実現できるし黒だけを操作するので反応が早いというのがウリ。

 ただ、この動画で実際のパネルをみると、反射型液晶に似ているようにみえる。それもそうだろう。白黒の原理だけでいうと反射型液晶は液晶の偏光性をいじって反射光を調節しているのだが、CLEARink も光を吸収する黒い粒で反射を抑えるという構造であるから白の部分の見え味は同じになる。白が弱いとなると鮮明さ・鮮烈さに欠けるので、つまり見た目が悪い。あんまり普及しなかった反射型液晶と同じ運命になるかもしれない。

 通電しないときも黒が残るのであればそこは長所になって、別に綺麗でなくてもわかればそれでいいような値札などには重宝しそうだ。この白の問題についてブレイクスルーがなければ、せいぜいカシオの腕時計のような小さいパネルを置き換える程度に留まるのではなかろうか。

yota3 (yotaphone3) のお披露目 (動画あり)

 今日2017/08/23 北京のロシア大使館で yota3 のお披露目会があったわけですが、、Youtubeに動画がアップされていたので置いときます。

www.youtube.com

www.youtube.com

 この限られた動画ではあんまわかりませんが、まぁ YotaPhone2 がひとまわり大きくなったようなもんですかね。使用感は大差ないのかも。

 記事もみつけました。

www.cnbeta.com

 相変わらずスペックがよくわかりませんが、「SamsungGalaxy S8より薄く、iPhone 7 Plus よりも10g軽い」ということなので、8.0mm以下で178g?

 まぁ私が勝手に兄弟機と推測している酷派のCoolpad Cool M7(GSMArena) が 151.1x74.3x6.9mm で 152g なのでなんとか可能な数字か。

 販売については最初はネットでは京東(JD)で独占販売するらしい。このお披露目会では最初に製造された200台がロシア大使に送られたとのこと。(他の情報源ではこの200台というのは9月に厦門(アモイ)で開かれるBRICsのサミットで贈り物にされるとのこと。)

 JDつーのはこれです。

www.jd.com

 ドローンで配達するとかなんとかいうのが日本のニュースになるようなとこですが北京周辺を地盤としてるとこですな。

www.jd.hk

 海外向けサイト(香港)がこれ。ここにでてくれば買えるのかな?

電子書籍商の戦略

YOTA3双面屏阅读手机战略新闻发布会在俄罗斯大使馆成功举行

小説家(?)の一雪なる人が書いたレポートでIT系記者が書いているのよりは詳しくお披露目会の内容を伝えている。

 この記事で面白いのはこの部分ですな。

跨界主流阅读平台,打造阅读生态标杆产品

本次战略新闻发布会上,阅文集团、掌阅科技、咪咕、京东阅读等国内主流移动阅读商齐聚一堂,无形之中成为本次会议一大亮点,而他们正是YOTA3双面屏阅读手机的内容战略合作商。

随着移动阅读市场开始蓬勃发展,各种阅读平台、阅读APP应运而生,高速的移动通讯网络、成熟的内容出版服务、蓬勃发展的内容阅读平台,手机阅读已经形成成熟的互联网生态。在此大环境下,YOTA3双面屏手机应运而生,顺势而上,积极布局阅读细分市场,在本次战略发布会上与阅文集团,掌阅科技、咪咕、京东阅读等多家重量级内容商达成战略合作。

YOTA3通过整合一线平台的优质阅读资源,旨在打造移动阅读生态,提供创新的革命性产品,为用户带来“硬件+内容”的一体化高品质阅读服务。

 このお披露目会に中国国内の電子書籍プラットホーム各社が集まって、戦略的協力をすることで合意したという。具体的に何をするのかよくわからないのですが、これひょっとして次に読書向きの YotaPad を出すということかな?

(→8/24 閲文集団の微博(weibo)によると、専用アプリかなんかを出すということ。YotaPhoneの背面(電子ペーパー面)で文章など読むためには普通のAndroidアプリとは違った色の設定が必要だが、それを考慮したアプリを作るということだろうか。)

Rostec と YotaPhone

 Yota3 (YotaPhone3) のお披露目が今日(2017/08/23)北京のロシア大使館で行われるのだが、なぜ一民間企業のスマホが大使館の場を借りて発表されるのか、不思議だったので背景を調べてみた。

 最初に簡単にまとめておくと、YotaPhone の後ろにはロシアの巨大軍需企業体 Rostec (ロステク/ロステフ/ロステフノロギヤ/ロシアンテクノロジーズ) があり、Rostec の社長セルゲイ・チェメゾフはプーチンの「お友達」。とまぁそういうわけだ。

 巨大軍需企業体と書いたが、具体的には軍事関連企業を中心とする巨大企業体で、武器の製造から輸出までを垂直統合する目的で2007年に設立され、2008年から国有企業が払い下げされていって形成された。言うならば政策的につくられた「軍産複合体」だ。チェメゾフは「お友達」だと書いたが、プーチン東ドイツドレスデンでスパイやってたころに同じアパートに住んでたKGB仲間らしい。「お友達」よりは「同志」かな。

 Yota は最初スカルテルといって、2006年ごろからロシアのWiMAX網構築をやっていたが、2012にはLTE網に転換した。通信網は社会のインフラだから政府がある程度は介入するもので、あとからできた Rostec のグループの中に組みこまれたようだ。

Rostec :: About :: Sergey Kulikov

 たとえばこの人の経歴をみるとRostecの幹部でありつつ2009年からスカルテルに入っている。

 初代 YotaPhone は2012年に作られ、最初のロシア製スマホとして有名になったが、その一方でスカルテルの経営は悪化、経営立てなおしに Rostec が直々に介入するようになり、その結果として、2014年、ヨタデバイシズの株を25%押さえることとなったらしい。

Rostec :: News :: Rostec acquires a 25% stake in Yota Devices

 その年に名機 YotaPhone2 が登場し、ロシアの国産スマホとして、プーチン習近平に送ることとなった。

www.youtube.com

 さて YotaPhone2 の次機だが、既に2014年にファブレットを出す計画があったらしい。

Rostec :: News :: Yota Devices to release a phablet

 前にも書いたように YotaPhone の Yota はギリシア文字の ι(イオタ) つまり i のことだ。ロシアの iPhone として期待もされていただろうし、iPhone に対する iPad のように YotaPad のようなものを出す意向があったのだろう。しかし YotaPhone2 はハイエンドすぎて無茶苦茶高かった。それで中国の安価な製造能力を狙って2015年にはZTEとの提携をしたようだ。

Rostec :: News :: Yota Devices and ZTE’s associate companies have decided to collaborate

 2016年初頭にはプーチンに "YotaPad" の試作品とおぼしきものを見せている。こういうところから見るとプーチンの意向はある程度は反映されているんだろう。

YotaPad все же выйдет в свет (ページ中頃にプーチンが"YotaPad"を眺めている動画あり)

 しかしその一方でロシアはウクライナへの介入のせいで2014年から経済制裁をくらっている。中国との提携はその打開という面もあるのだろう。しかし資金調達も中国をあてにしたのはちょっとよくなかったかもしれない。2015年の10月に香港の投資会社に株を売却したのだが、さらに2016年に株の買い増しをされてしまった。

Rostec :: News :: A Hong Kong investor is to buy out 64.9% of shares in Yota Devices

Rostec :: News :: Yota Devices Has Closed the Deal Selling 30% of Its Shares to the Hong-Kong Based REX Holding

 それから Rostec のニュースに YotaPhone 関係の記事がなくなってしまった。いつのまにか提携相手が ZTE(中興) から Coolpad(酷派) にかわっていたがそのあたりの事情はよくわからない。酷派が落ち目なので安く買い叩いたのか? 過去の冒険的な技術力に期待したのか? ZTEの試作品の出来がまずかったのか? そのあたりはよくわからないが、開発製造が完全に中国側に渡っていることはこの記事からもわかる。

blogofmobile.com

 YotaPhone3 ではなく Yota3 ということで売ろうとしているのもそのせいかもしれない。しかし商売上 YotaPhone の名前を出さないわけにはいかず、今でもどっちにしたいのかよくわからない状態だ。

 しかしそのような状態でも Rostec はヨタデバイシズの株の10%はおさえているらしい。プーチン様の紐付きスマホという性質は今でも残っているということだ。アメリカとか日本で暗躍するロシアの影をみるとどうも躊躇してしまうな。....YotaPhone2 をありがたく毎日使わせてもらっている状態で躊躇もくそもないか。

参考資料:

Yota3 (YotaPhone3) の発売予定価格 と酷派(coolpad)の兄弟機らしいもの

 Yota3 (YotaPhone3) の中国国内の発売価格が決まったようだ。前紹介した優待券配布サイトに8/17頃、通販機能が追加されて、同時に国内でのお披露目も決まったらしい。こっちは8/23北京のロシア大使館にて、ということだ。

 ただ不思議なのは微博(weibo)で燕山派なる人が招待メールを公開したのが 8/15で、そういった招待メールの一つをもとにしたとおぼしきニュースがIT之家にでたのが8/16だからそれらより遅れている。そういうとこが謎でいまいち信用が持てないところの一つ。ただwhoisするとAndroid開発会社であることは前にも書いたとおりなので、ひょっとしたら開発費の一部として販売権でも持っているのかもしれない。

shop.yotaos.cn

 (2017/09/10 追記 このサイトはやはりニセである模様)

 このサイトで今出ている値段によると

  • 128G 黒 3198元 (5.23万円 479USD)
  • 128G 白 3098元 (5.07万円 464USD)
  • 64G 黒 2498元 (4.09万円 374USD)
  • 64G 白 2398元 (3.92万円 359USD)

 という塩梅らしい。(日本円/米ドルはgoogleで計算)。白の方がちょっと安い。白と黒どっちがいいかといわれるとおっさんなので黒を選びたいところだが、自分の使い方として日光に晒したまま使うことが多い(歩きながら地図をみる、車のダッシュボードにおく)。そういうことを考えると実用的には白にした方が発熱が少なくなってこわれにくいかもしれない。

 とはいいつつも、ここに書いてあることを鵜呑みにすれば、まだ開発中らしいので9月に出たとしてもまだバグだらけで買うのはアップデートされるのを待った方がいいのかもしれない。いずれ日本にいながらにして買えるのはまだまだだろう。

Cool M7

 先のことなので「かもしれない」だらけの記事を書いといたが、Yota3 の製造元とされる酷派(Coolpad)から、8/17に Cool M7 なるものが発表され月末から販売開始される。

item.jd.com

 そのスペックをここに紹介すると、

  • Snapdragon 625
  • 5.5インチ fullHD
  • 前1300万画素(f/2.2)+背1200万画素(f/1.8)
  • RAM 4G ROM 64G
  • 3200mAh

 という感じで、伝え漏れる Yota3 の仕様に似ている。もっというならカメラの背面の配置やデザインの雰囲気がそっくりだ。もちろん Yota3 が持っていない特徴もあるのだが、酷派の経営状態が悪いこと、部品調達の都合や設計の手間など考えれば、Yota3 と Cool M7 はそれらを流用しあっていると考えてほぼまちがいないだろう。

 個人的に感心したのがカメラで、前と後ろでf値を変えていること。ほぼ同じ画素数のものを二つそろえてどうするのかとおもっていたが、そう来たか。なるほど。

 ちなみにお値段の方は2699元ということで、中国の紹介サイトをいろいろ見ていると高いということになっている。たとえばこれ。

www.elecfans.com

 大陸スマホ界でかつて覇をとなえた酷派の「王の帰還」の最後の戦いか... という記事で、最後に無茶苦茶高いアホかということで締めている。

news.ikanchai.com

 これもなかなか深い分析。oppo, vivo のマネをして低品質高価格路線に突入したけど oppo, vivo のようなブランド構築をしていないと。他の記事でもoppovivo 両社と比較されることが多い。曰く一年前にこれを出していれば oppo, vivo と渡りあえた、と。酷派は冒険的な機能開発をしていたその記憶があるせいでたとえばダブルレンズでないことにも不満があるようだ。というかダブルレンズなんてのが今や主流になっているなんてこと始めて知った。中国のスマホ業界は過当競争に陥ってるんじゃないかという気がしないでもないが、その死闘を潜りぬけて海外に販路を広げてるんだから、ぬるま湯の日本企業が勝てるわけない。

 それはともかく、Yota3 出たけど製造元がスマホ事業撤退とかだとシャレにならん。そこはロシアと中国の面子でなんとかなるかもしれんが。