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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

文石科技(Onyx) Boox シリーズ の最新ファームウェア V2.1.1 がすごい!最強PDFリーダーの誕生

Boox Max2 ファームウェア V2.1.1 がやっと来た

 さてBoox Max2 のファームゥェアが V2.0.1 になってちょっとデグレた感じで、ちょっとイライラしていたが、大陸の方では V2.1、V2.1.1と続々新しいのが出ていた。それがようやく今週になって海外向けに落ちてきた。言語を英語に変更するとOTAアップデートできるようになる。ということで、どんなもんかちょっといじってみたのだが、これがすごい! よくやった文石科技(広州 Onyx)! ということで何がよかったのか事細かに書いていこうとおもう。

NeoReader 3.0

ページ分割ができるようになった!

 さてBooxシリーズのデフォルトリーダの NeoReader のバージョンが3.0に上がったのだが、何回も書くがこれがすごい!たとえば国会図書館デジタルコレクションの画像なんかは見開きスキャンそのままなので、これをこういう端末で見るときは半分にして右から左に読むということに対応したリーダでないと読みづらいのだ。Boox Max2 (13.3インチ) の利点の一つは大画面ということで、その見開きそのままでも読めるということなのだが、NeoReader 3.0 はその複雑なところへ一気に対応してきた。つまり Boox Nova Pro (7.8インチ) のような(比較的)小画面でもこういった難あり物件を読みこなせるようになるということだ。具体的にはまぁこんな本を読むとしよう。続修四庫全書のPDFで、見開きではないが一ページに二葉並べてある。

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続修四庫全書 東華続録の一ページ

 NeoReader 3.0 で メニューを出して、ナビゲーションというところを押すと「リセット」「コミックモード」「文書モード」「他の設定」が出てくるが、こういうややこしいのは「他の設定」になる。「他の設定」を押すと設定できる全てがでてくる。

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矩形分割・ページ進行の設定

 これが本当によくできている。自動で矩形分割されるし、その矩形を自分でいじることもできる。二分割・四分割だけではなく、六分割九分割というよくわからん分割の設定まである。

  • トリミング 設定を全部に適用するか 偶数ページ奇数ページで設定を分けるか
  • 画面分割方法 一分割・左右二分割・上下二分割・四分割・左右/上下六分割・九分割
  • 表示順 分割した矩形を表示する順番

 これだけ設定できれば自分の用途では十分すぎるほどで、普通にこの例の画像を四分割し右上→左上→右下→左下と見るようにするとこうなる。

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四分割して半葉づつ表示したもの

 おぉぉ。Boox Max2 は画面がデカいのでここまでは不要だが、これが 6インチの画面でできると6インチの端末でも生きてくる。いや本当にすごい機能をつけたもんだ。読む順番で閉口させられることの多かった自分としてはこれだけやってもらうと何も言うことがない。はじめに例に挙げていた見開き画像のPDFも、

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国会図書館の見開きスキャン画像

 ↑これが↓こうなる

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一ページに切り出し分割

 すごい。。。すごい。。。

 (いままでこういうのは eBookDroid とか Librera で見てた)

明度もいじれる

 ところで国会図書館の画像はカラー写真の場合がある。それを電子ペーパーで表示させると律儀に白黒16階調の中間色で表現してくるので却って読みづらいときがある。そこで、また設定を開いて「フォーマット」を押すと「表示」「コントラスト」「再表示」のタブがあり、そこの「コントラスト」を選ぶとこのような項目がでてくる。

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「フォーマット」→「コントラスト」タブ

 それぞれの項目がどれだけ寄与するのかまだよくわかってないが、とりあえずこの画像をみやすくするためには「すかし」「強調表示」をすこしいじるといい感じになった。

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みやすい!みやすい。。。

 読みやすい!読みやすい......

タッチでの設定も詳細にできる!

 こういうリーダの使い勝手を左右するのが「画面のどこを押すと次のページに進むか」で、だいたいこういうのは横書きを前提にしてるので右側で次ページというのが多く、縦書きの本を読むときには直感に反するんだよね.... というところだが、ここもカスタムできるようにしてきた。

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タッチの設定 プリセットとカスタム

 プリセットは六種類。いずれも右側に次ページが配置してある。ということで自分はカスタム1のように上が前ページ下が次ページとした。これだと横書きの本も縦書きの本も直感に反しないように操作できる。設定は画面を九分割してそれぞれに操作をハメこんでいく形。こんな感じ

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カスタムタッチ設定画面

 九分割と細かすぎず粗すぎない分割で適当に割りふればよく、このあたり直感的にできる。すごいぞ文石科技(ベタボメ)

テキストファイルとか

 ちなみにテキストファイルを NeoReader3.0 で見ると簡体字がデフォルトになってしまう。「フォーマット」の「フォント」で簡体字になっているところを「繁体字」にできるところがあるが、日本の漢字(新字体)とはまた別なので、まぁ中国語読めない人にとっては難しいかもしれない。あと縦書きもできない。まぁでもそういう人は Perfect Reader とかの好きな Android アプリつかってればいいんじゃなかろうか。テキストの漢字表示はやばいけど html, epub, pdf は問題ない。フォントも自分で指定できるので適当にフォント入れておけばよかろう。そのためのAndroid、適材適所ですよ

ノートアプリ

 それからノートアプリだが、今まで書いた線にアンチエイリアスがかかって勝手に太くなるのが不満だったがそれがなくなってドット通りの白黒になった。しかも反応速度も早くなって、非常に気持ちよい。すばらしい。これは前Youtubeにアップした動画 の中で文句つけてたところだが、これでそこが解消されたことになる。ありがとう!

 あとは塗り潰しできるようにしてほしい。塗り潰せると白黒画お絵描きマシンとしても使えることになる。今のままだと結局白描絵しかできないので落書きしかできない。ベタ機能希望。

シェアできる

 前からあったかもしれんが、書いたものをシェアしやすいような仕組みがあるっぽい。

PDFに直接書きこみできるようになった

 あんまつかってない機能なんだが、PDFに直接書きこみできるようになったようで、ペンでちょんちょんと触ってたりすると点々がつく。この直接書き込みというのは、いままで書き込みはできてたけど、それを保存するときはエクスポートする必要があったのが、そのPDFに直接書きこんでしまうようになるということで、いいのか悪いのかちょっと微妙なところはあるが、多分大方の人には便利な機能だろう。

クラウド対応

 全体にクラウド対応がすすんだようだが使ってないのでわからん。

書店が変更

 書店が前は京東の電子書籍ショップがあったが、今回なくなってよくわからないパブリックドメインっぽい英語の本が置いてある。中国語に切り変えるとまた京東のそれになるのだが、登録しないと使えないのでどうでもよい。今回よくわからないパブリックドメインの本が置いてあるけど、これいっそのことOPDSに対応したサイトをいくらでも追加できるようにすればいいのでは。archive.org とか project gutenberg とかならその方法で簡単に追加できるのでそうなってほしい。

全体に反応が速くなった!

 すでに書いてはいるけど全体に反応が速くなったことは項目を立てておかねばなるまい。今までは何だったのというくらい速くなった! ペンで書くのも本をめくるのもよい。これだと多くの人の許容範囲に収まるとおもう

総評

 今回のアップデートは自分の使い方の範囲では非常に満足の行くものだった。とくにスキャン画像PDFリーダとしてはほぼ完成された。がんばって Kobo gloHD で KOReaderをいじったりする必要もなくなった。7.8インチの Boox Nova pro 、どうするか考えてたけど自分の用途での要求仕様がこれだけ満されていると32Gしかなくてもいいかなという気がしてくる。既にポチってAmazonのカートに入ってるのだが、どうしようかな。

府立図書館の大学図書館との連携は危険

 今日本屋で日本史の本棚を眺めていて調べたくなったことがあり、ちょっと府立図書館に行って関係の本を集めてきたが、わりとまともな本が借りられていたので、予約をネットでできるように申請して、帰ってからログインしたり予約したりした。

 その過程で図書館のサイトをみたのだが、そこに「花園大学情報センター」の資料が利用できる旨書いてあり、取りよせて閲覧できると書いてある。

www.library.pref.kyoto.jp

 みると現在以下の大学図書館から本を取りよせて閲覧できるという。

 いやいやそれは危険では。

 何が危険かというと一般市民相手の公共図書館は一般市民が相手だけに中にはとんでもないのがまじっていて、本に書き込みしたりこっそり破ったり附録の地図を盗んだりするような、他の利用者のことを考えたことのないようなひどいことをする。大学の図書館の利用者がみなまともとはいわないが、その比率は比べものにならない。大学の図書館には書店に普通に並んでるような一般書もあるが、そんな簡単に手に入らないようなのもある。一般市民にそういうの触れさせていいのか?

 最近どういうわけか大学の図書館の本を一般に公開させようという風潮があって、まぁそれで自分も裨益してるからなんともいえないところはあるが、それはあくまでも大学の図書館に一般市民でも入れるということで、その大学と、図書館に入った一般市民との一対一の関係になるからそれはそれでいい。そこへ府立図書館が中に入って、特定できない一般市民のために大学の図書館の本を外に持ちだすというのは本当によくない。たとえば府立図書館の本であれば持ち出そうとするとゲートでひっかかるはずだが、大学の図書館の本はその大学の図書館の防犯タグつけてても府立図書館の防犯タグつけてるわけではないのだから防犯システムを潜りぬけて外へ出ていくのではなかろうか。府立図書館はそういうところまでちゃんと面倒みれるのか? 大学の図書館にある本を一般市民にも見れるようにしようというその理念は麗しいかもしれないが、本の管理という面ではあまり現実的ではないのでは。

貧者の晩餐会 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

貧者の晩餐会 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

学校図書館の地域開放

学校図書館の地域開放

Yota3+ を手放した。

 さて安くは売らんとふんぞりかえっていた Yota3+ であるがタマに写真とるくらいにしか使ってなかったところ、Twitter を通じて接触してくれた人がいて、それくらいでも買うということなのでやりとりを開始した。ラクマで取引したいということなので登録してはじめてラクマをつかった。

 ゆうゆう窓口にいくと、出入口のあたりに小型のプリンタが置いてあって、そういう取引で使えるらしいというのは知っていたが、今回はじめてそれも使った。QRコードを示すと、自分の受取と荷物に貼るものと控えの三種のシールがでてきて、そのまま窓口で手渡すと荷物に貼って残りの控を返してくれる。これで、送り出し側も受取側も互いの個人情報を知らずにやりとりできるというのだからすごい。うーむ。便利ではあるがこれみんなが善意という前提でなりたつ仕組みで、トラブル起こったときに大変そうではあるな。しかも故意がまじってるとなおさら。はじめてだからうまくいってほしい。ちなみに今スマホを郵便局で送ろうとするとバッテリーが入ってるのでなんか時間がかかったりするらしい。大変だな。

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多武峰

 ちなみにこれが Yota3+ がカメラとして最後に活躍した 多武峰の「勝軍地蔵」の写真で、こないだ行ったとき最初は YotaPhone2 で撮ってたけど Yota3+ 持ってるのを思いだして出して撮った。中心の白いので覆われてるのが鎌足像でその手前の小さいのが勝軍地蔵。カメラとしてたまにつかうだけだったのがもったいない。結局、WCDMAB6 つかえるように改造しなかったので山奥では使えなかった。

長谷・多武峰 (近畿日本ブックス (11))

長谷・多武峰 (近畿日本ブックス (11))

多武峯 談山神社の四季―根津多喜子写真集

多武峯 談山神社の四季―根津多喜子写真集

Youngy Boox の カラー電子ペーパー の製造者は Plastic Logic

Plastic Logic

 さて事情通の Good E-Reader が昨日こういう記事を書いていた。

goodereader.com

 例の 折衷式カラー電子ペーパー Youngy Boox がつかっている色付技術は Plastic Logic のものということだ。Youngy Boox については以下の記事を書いた。

inudaisho.hatenablog.com

inudaisho.hatenablog.com

 従前の説明では下地にeInkの白黒画面を使い、その上にカラーフィルターを置いて4コマ(赤青緑と明るさを補うための白)で色を表現するということで 300ppi が150ppi になるということだったが、改めてググってみると Plastic Logic 自身が Youngy Boox について説明していたのをみつけた(今頃) (記事は去年2018年の10月30日付)

www.plasticlogic.com

 Plastic Logic 自身の説明では、150ppi の上に上記のカラーフィルターをつかうので 75ppi になる、とある。なーるほど。それであんまりすっきりしない説明だったわけだ。そしてこの 75ppi の技術であるが、既に2011年には完成していたようで、こんな紹介記事→Plastic Logic color flexible e-paper revealed - SlashGear もあり、また Youtube にまで映像があがっていた。

www.youtube.com

 この映像でわかるカラー電子ペーパーの色味は Youngy Boox に近い。結局自分では発光しない電子ペーパーの上にカラーフィルターをのせているので努力に限度がありどうしてもこういう地味目な見た目になってしまうんだろう。そこは好みによるが重要なのは切り替えが結構早く、なんとか電子書籍に使えそうというところか。もっと重要なのはこれ2012年頃の成果だということでそれから7年ほどたっている。どれだけ進化があったのか。その間にeInkの方は300ppiに到達したのだが Plastic Logic がそれについていけてるのだろうか。

eInk 社とPlastic Logic の関係は?

 よくわからん。Plastic Logic 社のサイトの History をみると、当初は湿式の電子ペーパーの研究をしていたが途中から eInk 方式になっていて "著名EPD企業"とともに仕事することになったとある。つまりは eInk 社の特許技術をつかって電子ペーパーの生産を目指すことになったということだろうか。

 最初にはった Good E-Reader の記事によると、電子ペーパー技術の重要な要素である画面更新で E-Ink Regal を使わず、Plastic Logic 自身の waveform を使っているという。ということはやはり eInk 社の基礎技術の上に PlasticLogic 自身の技術を組みあわせて作りあげたものということになる。ということは製造ラインが eInk社 とは別になるので eInk 社の 300ppi に追従できてるのかわからない。また、アジアに新工場をつくり、端末を最後まで工場内で作りあげて出荷する事業モデルを考えているという。今の電子ペーパー業界の工場になっているのが Netronix ( 台湾 振曜科技)で、現状は Netronix の進捗次第で出荷が遅くなったり早くなったりするくらいなのだが、そこを目指しているということだ。

 あるいは、Plastic Logic の技術はちょっと暗いのと精細さに欠けるということで2012年ごろは受けず、eInk社がカラー電子ペーパーの開発を継続したが、結局電子書籍端末に使えるようなものができず、またPlastic Logic に御鉢がまわってきたということだろうか。そうなると、日本のNEC有機ELの技術を買ったサムスン有機ELスマホのシェアを取ったものの、テレビの分野では安定して大きい画面を作ることができず、LGのカラーフィルター式色付有機ELに負けた事に似ているかもしれない。

明日からの香港のデジタル製品展示会には注目

 明日13日から香港でデジタル製品展示会が開かれるが、毎年そこで文石科技(広州 Onyx) の新製品が発表されている。そろそろなにか出てくるかとおもっていたところ、Good E-Reader からこの記事が出てきた。ということはつまり明日からの展示会でカラー電子ペーパーの端末が出てくるということだろうか。これは見物だ。 (2019/04/15 そういう情報は何もでてきてない)

香港貿發局香港春季電子產品展

 

明智越と愛宕山

明智

 亀岡盆地から京都方面へは普通国道9号線沿いの老の坂で出るのが普通だ。保津川沿いは険しい谷になっていて道がなく、保津川を出たところの嵯峨・嵐山方面と亀岡は直線距離だとわりと近いのに車で行こうとすると大きく遠まわりすることになる。

 ただしそのへんを通って明智光秀が本能寺へ行ったとかいう話があり、今そのルートは明智越と呼ばれている。その辺漠然と聞いていただけで実際どういう道かは知らなかったが、こないだ、愛宕山へ登りにいったが時間が遅すぎた時、試しに明智越の方へ抜けてみたらおもしろかった。ある程度登ると高さに大差ない道がずーっとつづく尾根道で、道のためにあるようなところだった。

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明智越のルートから外れた尾根

 写真の場所は実は明智越ではなくてそこから分岐して北へ行く尾根なのだが、感じがわかりやすいので貼っておく。細いところではこんな感じの道がずっとつづくところで、もっと山道っぽいところを歩かされるとおもっていたが全然そんなことはなく楽なものだった。亀岡に近づくと看板がでてきて、ふるさとの史跡を整備しようとしているのがわかる。

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土用の霊泉

 これは土用の霊泉というところでどうも水が湧いていたらしいが、枯れていた。しかし水が湧いていたというだけあって地盤が軟弱なのか崩落して道が半分なくなってもいた。一応建前上は通れないことになっているのはこういうところが数カ所あるからのようだ。

愛宕山との関係

 さて、その看板を何個か眺めてわかるのは、亀岡に近いあたりに愛宕山白雲寺の分寺のようなものがあったようだ。ということはこの道、もともとあった愛宕山へ行く道で、明智光秀がはじめて整備したわけではないことになる。さて、この尾根道を今昔マップに傾斜線量図を重ねて強調させた図で見てみるとこうなる。 原図(今昔マップ on the web)

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明智越 重ねただけの図 「今昔マップ on the web 」の画像を加工

 傾斜線量図をかさねると地形が強調されて尾根筋がはっきりみえるようになる。これだけだとわかりづらいので赤で明智越、青で保津川を表示するとこうなる。

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明智越を強調 「今昔マップ on the web」 の画像を 加工

 この赤のルートがいわゆる明智越なのだが、赤のルートの右がわの谷と左の盆地を結ぶ道がこのルートの他にないことがわかるだろうか。丹波高地程度の低い山地の場合、すぐ崩れる湿気た谷を通るよりも、乾燥した尾根道を歩く方がはるかに楽なので、尾根道の方が街道として選ばれやすかったというのはほぼ常識のようなものだが、ここでもそれがあてはまる。赤のルートの右の谷をすこし登っていくと水尾で、そこから登っていくのが愛宕山になる。つまり赤のルートの右端の谷の右側が愛宕山の塊になる。この赤のルートの途中で上に分岐しているところがあるが、そこが上の写真の場所になる。そこも、そこしか道がない場所なので昔は道標とかあったかもしれない。今は鉄塔が立っていてちょっと改変されているのと明らかに街道でないところを歩いて北へ行ってしまったのでそういうのがあるかどうかわからなかった。

 ところで、尾根道を伝うだけだと上の地図だと右下の方へ行った方がよさそうなのがわかるだろうか。もうすこし大きい全体図を同じように「今昔マップ on the web」を使って作ってちょっと加工するとこうなる。

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明智越・保津川・唐櫃越・老ノ坂 「今昔マップ on the web」の画像を加工

 今度は黄色で道を示した。こうしてみると明智越のルートは途中からいくつか選択肢があるのがわかるとおもう。途中北へ分岐するルートはぐるっと北の方へまわって愛宕山の裏へ出る。山では上り下りで疲れるので愛宕山へ楽して行くなら北へ回った方がいいかもしれない。地図で色はつけていないが、水尾からは愛宕山へ登らずにだいたい同じ高さの山腹を縫って清滝の方へ出る道がある。京都へ行くのだけが目的ならその道か、保津川の方へ降りて川沿いの道を進むか、になる。尾根をずっと伝っていくと保津川のJR保津峡駅があるあたりに出る。今はそこから川沿いに進む道があるが、このあたり深い峡谷なので信長光秀の時代にそのルートがあったかどうかはしらない。嵯峨の豪商角倉了以がここを浚渫して荷物の運搬につかえるようにしたのはもうすこし後なのでひょっとしたらもうすこし河原が広がっていて道として使いやすかったのかもしれん。

 図では老ノ坂と唐櫃からと越も示した。古代の街道は尾根道と書いたがそれは山だらけの場合で、広い河原や砂浜を行く場合もあるし、谷であっても老ノ坂くらい広いと尾根道よりも大量の荷物を運べるので街道になる。といっても地図ではつい新道の方に色をつけてしまったが、新道のような深い谷はすぐ崩落するので土木技術が発展するまでは選ばれず、老ノ坂の旧道は南側を通っていた。ともかく老ノ坂ルートは足利尊氏が挙兵した篠村八幡宮がそのルート上にあることからもわかるように亀岡盆地方面から京都へ出るときのメインルートなので、明智光秀の軍隊が通ったのは、すくなくとも本隊が物理的に通れるのはそのルートだろう。『信長公記』では「老ノ山」で右に下りるか左に下りるかみたいに書いてあったがこの峠を下りたところの沓掛で京都へ行く道と西国街道へ出る道に分かれるのでそこを念頭に入れて書いてるんではなかろうか。

勝軍地蔵

 ところで戦国末期には愛宕山は勝軍地蔵の山として武将たちから信仰されていたらしい。勝軍地蔵については良助法親王(良助親王)(亀山天皇第八皇子1268-1318)が宣揚したとか清水寺が元とか足利将軍家が信仰していたとかいろいろあるようだが、とりあえずciniiにあった論文のリンクをはっておく。

 勝軍は将軍に通じ、軍神として信仰を集めていたようだ。

細川氏と勝軍地蔵

 ただし愛宕山と勝軍地蔵が結びつけられたのはそんなに古いことではなく、応仁の乱以後の畿内政治史で異彩を放った細川政元が何らかの関与をしているらしい。

近藤謙「愛宕の神の変貌―丹波の神から勝軍地蔵へ」(京都愛宕研究会講演会レジメ) (pdf)

 具体的には足利将軍家の勝軍地蔵信仰と細川政元愛宕信仰が習合し、細川政元が暗殺されたあともその信仰は残存した上に昂じて日本中のイケイケの武将達の信仰を集めたようなのだ。戦国時代というのは日本史の中でも一般からの人気が高いジャンルだが、足利将軍家足下の畿内は混乱を極めたのと人気がなかったためにあまり研究も進んでいなかった。最近になってようやく整備されだしたのでこれから急速にのびて戦国時代観を書き変える分野だとおもわれる。たとえば愛宕山の北側には宇津氏という土豪がいて、数少ない皇室領の山国荘を押領しようとしたりしていたが、丹波細川氏の領国であり、宇津氏も細川氏の被官で、しかもかなり忠実な方だった面があったことがわかってきている。

 細川政元の養子の細川高国は京都の東、一乗寺の上の瓜生山のあたりに勝軍地蔵城(将軍山城 - Wikipedia)を作ったらしい。その細川高国が権勢を振っていた1520-1524に愛宕山の寺坊が増えて愛宕五坊となった(野崎2016)というのだから、細川高国愛宕信仰を維持したのだろう。細川政元愛宕信仰については、

末柄豊「細川政元と修験道」『遥かなる中世』4、1992

 という考証があって、司箭院興仙すなわち宍戸家俊なる修験者が関わっており、愛宕信仰と勝軍地蔵を結びつけたのもこのあたりの仕業なのかもしれない。

明智光秀と勝軍地蔵

 その細川氏の領国だった丹波土豪の波多野氏などを平らげたのが明智光秀だが、本能寺の変の直前にも愛宕山に参ったとされている。愛宕信仰と勝軍地蔵信仰が結びついて以後のことなので愛宕権現の本地は勝軍地蔵になっており、明智光秀は軍神の勝軍地蔵に参って籤を何回も引いた(『信長公記』)ことになる。また、明智光秀細川高国比叡山の麓の瓜生山に作った勝軍地蔵城にも一時入っているのでなにか適当なお話をつくってこじつけようとおもえばいくらでもこじつけれそうだ。明智越についても、京都へ行く最短ルートとして整備したというよりは愛宕山へ行く道なので、既存の道を整備して愛宕山へ行きやすくしたということかもしれない。おもわせぶりな項目を立てたが何かあるわけではなく、小説のネタくらいにはなりそうというだけの話。

京が見える明智

 ちなみに明智越のルートから北へはずれたところからは京都市内がこのように遠望できる。

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京都市内遠望

 信用できない軍記と名高い『明智軍記』では老ノ坂、唐櫃越とならんで愛宕山の近くのこのルートの三手を通ったということになっている。明智軍記では

保津ノ宿ヨリ山中ニ懸リ水尾ノミササギヨソニナシ内々作ラセ置タル尾傳ヲヅタヒノ道ヲシノギ嵯峨野ノ邉ニ打出テ衣笠山ノ麓ナル地藏院迄著陣ス

 となっているが全て尾伝いの道なのでどれがどれなのかよくわからん。おそらくこの記述のせいで明智越は本能寺の変のとき明智光秀が通った道ということになったんだろう。しかしまぁ、明智軍記でこのルートを明智光秀自身が通ったことにしたのはおもしろい。情報漏れを防ぐためルートを全部押さえたということもできるし、ここからだと京の町がよく見えるので適当なドラマをこしらえるにもいろいろ都合よさそうだ。

信長公記 川角太閤記

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足利季世記

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