メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

電子ペーパーをスクリーンにした珍品 PaperMovie (Dasung)

 某所で話題にあがっていた中国らしい奇想天外な珍品を紹介しようとおもう。

PaperMovie | DASUNG大上科技--电子墨水显示器发明者与领导者,真正护眼

 Dasung (大上科技) といえば、電子ペーパーをつかったディスプレイ Paperlike を開発して注目をあび、今また第二世代の Paperlike が出ているところだが、ディスプレイ専用の機械なのであんまり興味もなく、また国内の中国電子ペーパー製品専売業者であるところのSKT関係が熱心にアピールしてるので放置していたら、極めつけのキワモノを出してきた。

 その前に今の Dasung のラインアップを見よう。サイトのトップページには Paperlike Pro, Paperlike HD, PaperMovie の三種類のっている。Paperlike HD, Paperlike Pro がいわゆる第二世代で、HD は高精細版だ。高精細版といっても ソニーの DPT-RP1 と同じパネル(2200x1650 Carta)をつかっている。Pro の方は DPT-S1 と同じパネル(1600x1200 Pearl)を使っている。これからその上位規格(1600x1200 Carta)のパネルをつかったものがでるらしい。Paperlike Pro の Carta 版がここでいうHDなんだと予想していたが、そうではなかった。このあたりはややこしい。

 今年の春頃に第二世代(Paperlike Pro)を出すというアナウンスがあったのだが、その時点でこのCarta版は秋に出るとの予定だったので、そのころから既にeInk社(台湾 元太科技)の生産がアップアップしていたのかもしれない。

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Dasung のサイトから引用した商品画像1

 さて PaperMovie だ。「世界初の投影式電子ペーパーディスプレイ」と麗々しく書いてある。

PaperMovie が再び歴史を変える!

 とも書いてある。自分で自分に酔ってしまうところが中国人らしいが、奇想天外の珍品であることは事実だ。上についているのが気になるが、これを横からみるとこうなる。

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Dasung のサイトから引用した商品画像2 (横から)

 モロにプロジェクタだ。この使い方だが四つあるらしい。

  • マウスモデル
    • マウスの矢印が光る
  • 照明モデル
  • カラーモデル
    • 画面に色がつく
  • 映画館モデル
    • 映画を映すためのスクリーンとしてつかう

 現時点で世間に流通している eInk 社の電子ペーパーには白黒しか出ないという弱点がある。カラーは開発されているが彩度が低いのでまだまだ商品として採用されていない。まぁ白黒しか出ないから文字を表示させるにはいいのであるが、WindowsAndroidなどはカラーの画面を前提として色の配分がされているので、白黒しか表現できないディスプレイで使おうとするとどうしてもわかりづらくなる。また日光下でみやすいというのを売りにしても、暗いところではつかえないという問題があり、結局電子書籍端末でもフロントライトをつけている。設置型のディスプレイとして使うなら、当然室内で使用するのだからこの灯りの問題は当然出てくる。そこへしょぼいフロントライトをつけるくらいなら小さいプロジェクタで画面を投影すればいろいろつかえるし、反射光だから目にやさしいというアピールにもなるということだろうか。

 実は商品説明のところに誰がこういうことを考え出したのか書いてある。

電子ペーパーディスプレイが白色に更新されるとき、内部の白色微粒子が表面に浮びあがり、スクリーンとして理想的な状態になる。龚钴尔(龔鈷爾)さんはそこにヒントを得て、映画館レベルの単焦点プロジェクタと電子ペーパーパネルを組み合わせ、電子ペーパーディスプレイに驚天動地のおもしろい効果を生み出した

 なるほど、電子ペーパーの白一色をみて「スクリーンに最適じゃん?」と考え、プロジェクタをつけさせたわけか。道楽者の匂いがするなぁ... パンがなければケーキを食べればいい的な。

 龚钴尔というのはこういう人。

 わかりやすく言うと中国のSF作家である。文章を打つ人がこういうもののヘビーユーザーということは予想できるし、こういう奇想天外なことを思いつくのもわからないでもない。何者なんだとおもうかもしれないが、Dasung の創設者だからまぁ意見が通るのも当然ではある。

 しかしこの人の微博(weibo)を見ているとなんか文化大革命の真っ最中のような気がしてくるが、中国人は政治に敏感なのでそういう季節なのかもしれない。名前が本名だとすると少数民族系であるいはモンゴルか満洲系か...80後なのにこんな調子かとかいろいろ書いたが最近の記事の調子に合わないので消した。中国は変化が速くておもしろいですね! 機械のことだけ書こう。

16階調をどう突破するか

 電子ペーパーの限界としてカラーの他にもう一つ上げられるのが16階調しかないということだ。線だけで描画するならそれで十分なのだが画像を表現しようとすると途端に不足になってしまう。そもそもそんなことしなければいいわけだがそういう方向に向かってしまうものらしい。そういった問題を一気に解消するアイデアの一つが PaperMovie であるが、しかしこれプロジェクタが邪魔なのでそんなに売れないのではなかろうか。

 PaperlikeProとかHDのページをみると数種類表示モードが書いてある。

  • A5
  • A2
  • Floyd
  • 16
  • A61

 A2 が完全な白黒二色、A5が5階調、16が16階調ということらしい。これらはすぐわかる。A2が白黒で速く、16が16階調で遅い。A5の5階調はみやすさと速さのバランスを考えてそこに落としたというところだろう。つぎに Floyd だがこれはYotaPhone2でお馴染のディザの一つだ。ディザは濃淡を黒の点で表現するので実質白黒であるから速い。ただし点で表現しているのでどうしても輪郭が甘くなる。まぁ昔のブラウン管のテレビも今みるとなんかにじんでみえるが離れてみたらそれなりに見えるんだから動画などを離れたところから見るなら問題ないかもしれない。

 しかし謎なのが A61 モードだ。61...。技術的にできることを考えるとディザのような点の表現と階調の組み合わせであろうか。白を抜くと60段階。なので 4 x 15、5 x 12、10 x 6 など考えられるが、そんなとこだろうか。

珍品堂 ちんすこう 165g×5袋

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三幸 高級珍味 サーモン塩辛(ロング瓶) 200g

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YOTA3 (YotaPhone3) ・海信(ハイセンス)の Hisense A2 pro の動画

 Yota3 のおかげで 海信(ハイセンス) の Hisense A2 pro も好評裡に発売をむかえたようで、なんでも国産化しようとする中国のパクり・乗っ取り精神とロシアへの配慮がこういう形になったのかもしれないが、今中国がロシアのご機嫌を損ねてもろくなことはないのでそういうわけでもないかもしれない。単にYota側が注目を浴びるわりに動きが遅いので海信が先手を打てただけか。

 ビリビリ動画にYOTA3 (YotaPhone3)の紹介動画があがっていた。残念ながら流通量がすくないのでユーザによる動画がないのだが、珍しいので紹介する。

「科技美学直播」双屏手机 YotaPhone 3 开箱上手 | 哔哩哔哩

 日本のこの手の動画・ブログでいうところの「開封の儀」というやつだが、アプリてんこもりのあたりは日本のスマホを想起させる。しがらみが多いとこうなるのか。ちなみに百度の掲示板などみていると、自分が「最近の日本企業のような」と表現するところを中国では「中国式指導力」みたいな表現をしていたので、硬直化した組織の問題はどこでも同じなのだろう。肝心の電子ペーパー面だが、YotaPhone2 でいうところの YotaHub 相当の背面管理アプリとそのウィジェット類は動くようだ。だから時計や天気予報を表示させておくことはできる。それから中国の読書アプリの他のアプリとしては、微信(WeChat)も動くらしい。

inudaisho.hatenablog.com

 この記事では少ない情報で「失敗作」と断じたが、まぁ読書にコンセプトを絞ったということでわからなくもない。このYOTA3は中国市場向けなので、そのうちでる中国以外向けの YotaPhone3 はまた違う様相を呈するかもしれない。それにこういうのはハードの制限ではなく、ソフトの方で勝手に制限しているだけなので、今後のアップデート次第で市場・顧客の不満を吸収して他のアプリも使えるようになるかもしれない。かもしれないを並べておいたが今のままでは失敗作なのはまちがいない。

Hisense A2 Pro

 さて中国家電大手のハイセンス(海信)が出してきたHisense A2 Pro だがこちらはユーザがさっそく百度の掲示板に動画をアップしてた。

海信a2pro吧-百度贴吧 百度貼吧のHisenseA2Pro板

 それからこれもビリビリ動画にあがっている販売員による紹介動画。

[UD数码网出品]海信墨水屏A2 Pro上手 | 哔哩哔哩

 今日から中国は国慶節の連休なので動画をアップする人も増えるだろう。

YOTAPHONE 2 (YD201) LTE, 32GB,SIMフリー Black [並行輸入品]

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Kindle Paperwhite 32GB、マンガモデル、Wi-Fi 、ホワイト

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文石( Onyx ) がこれから出すBooxシリーズの新商品 Boox Canvas, Note, Max2

 Boox シリーズを出してる文石 (海外向け名称は Onyx )が国慶節後の10月中旬、香港で新商品のお披露目会をやるらしい。文石の微博(weibo)アカウントで宣伝していた。で、そこで紹介される新商品だが、Boox Canvas, Note, Max2の三種類だそうだ。Max2, Note は既に春に情報が流れていたが、Canvas は初めて聞いた。どんなものか。

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文石科技BOOX の微博(weibo)のキャプチャ

 上の画像をみたら一目瞭然だが、Canvas は9.7インチのパネルを使うらしい。Note は10.3インチ、Max2 は13.3インチとこっちは事前情報通りで、eInk社(台湾の元太科技)のパネルをつかった新商品をどしどし開発してる感じがある。ちなみに文石は電子ペーパーのみのスマホも過去に出しているくらい非常に意欲的な会社だ。

 9.7インチというとeInk社のサイト (E Ink Modules) をみてわかるとおり150dpiのパネルなのだがそれをそのまま使うんだろうか。名前からするとお絵描きタブレットということだろうか。となると reMarkable tablet の廉価版という位置付けだろうか。しかし reMarkable は 10.3インチパネルでdpiも高い。Boox Note が10.3インチだがそれとのバランスはどう取るんだろうか。Note はメモリ1M なので Canvas はメモリ多めにして dpi低めに抑える? もしくはYOTA3のように公開していない高精細なパネルがあるということだろうか。わからない。

 Note と Max2 については、9月ごろに出るという予定が10月になり11月になってしまった。この9.7インチから13.3インチのパネルは eInk 社の分類では "eNote" 向けということになり、7.8インチ以下の "eBook" 向けとは違う扱いになっている。ちょっと大きめのパネルは生産ラインが別なんだろうか。Dasung の新ディスプレイ Paperlike Pro も 150dpi のものはもう出たが、ソニーの DPT-RP1 と同じパネルをつかうバージョンは11月とアナウンスされている。AmazonKindle paperwhite の新型も10インチあたりのパネルをつかっているようだが、Amazon の新製品発表会で出てこなかった。ソニー電子ペーパー事業のために eInk 社と合弁会社を設立するくらいいれこんでいる。よくわからんがそのへんの絡みで大きめのパネルの生産がおいついてないんだろうか。

 消費者は何も考えず口を開けてほしいほしいと言っていれば済むが、生産者は計画を立て、工場建設などに事前投資してから首尾よく生産・販売して利益を上げないといけない。そのプロセスのどこかで失敗すると簡単に倒産・廃業する。LCDみたいに大量に出ているものならそのへんの計算も楽だが、電子ペーパーのようなニッチなパネルだと大量生産にうまく対応できないような仕組みになってる可能性もある。出るらしいから待つしかないな。

BOOX N96ML(JPモデル)

BOOX N96ML(JPモデル)

BOOX MAX CARTA(JPモデル)

BOOX MAX CARTA(JPモデル)

ソニー デジタルペーパー dpt-rp1

ソニー デジタルペーパー dpt-rp1

Yota3(YotaPhone3)国礼版の評価から伺える失敗作ぶり

 Yota3( YotaPhone3 )だが、京東(JD.com)で販売開始予定日にはすでに「注文殺到で10月25日から順次発送」とあったのでそもそも販売されていたのか疑っていたが、実際に購入に成功して商品を受けとった人がいたようだ。JD.comの商品ページにさっそく客の評価が書きこまれていた。それを読むかぎりでは YOTA3 はとんでもない失敗作である。

item.jd.com

 この記事を書いてる時点で評価は5つあるが、内容は三種類しかない。

  • 包装が豪華で満足
  • 背面(電子ペーパー面)は限られた電子書籍アプリでしか使えないから不満
  • イヤホンはどこに差すの?
    • (USB type-C)

 なんと背面の電子ペーパー面は限られた電子書籍アプリにしか開放されていないようだ。しかも評者の一人は、「読書端末として買ったのに使いたいアプリが対応していない」と書いている。これは... ターゲットを絞ったのにそのターゲットにも届いていないというお粗末ぶりでなんともコメントしようがない。

 YotaPhone2 は任意のアプリを背面で動かすことができた。表の Android の UI をそのまま背面に投影させることもできた。デフォルトではディザがかかっているがこれはアプリ毎に設定を書くことでくっきり表示に変えることができる。xda にスレが何個かたっているが、Android6 にアップグレードさせた YotaPhone2 での設定の例はおいしょまん氏が詳しくまとめている。

position.red

 まぁたしかにテキストのように白黒はっきりさせた状態が電子ペーパーのパフォーマンスを一番ひきだせるが、電子ペーパーには日光下でもよく見えるという普通のLCDにはない特徴をそなえているので、ディザかかってようがカラーが白黒になっただけでよく見えなかろうが、そうしたい時がある。選択の余地をのこしておけばよいのに、なんでそんな制限をかけたのかわからない。まるで最近の日本企業のようなお粗末ぶりだ。 まぁ中国というのはとにかく変化が速いので、あっというまに成熟してあっというまに老化してしまうところもあるのかもしれない。

tieba.baidu.com

 百度の YotaPhone3 板にこういうスレが立っていた。CEOの張光強などの判断らしい。つかえないから切りすてたということでやっぱり最近の大企業病にかかった日本企業のような感じになっている。ダメだなこりゃ。百度の YotaPhone3 板では張光強は光頭強とアダ名されている。まぁバカにするよな。YotaPhone3 板の話題の中心はもう Hisense A2 Pro に移っていた。

 ということで YOTA3 についてはもう追う気がなくなってしまった。名機 YotaPhone2 を愛でるか、ハイセンス(海信)の Hisense A2 Pro に期待するしかないな。日本円で5万程度するけど。

YOTAPHONE 2 (YD201) LTE, 32GB,SIMフリー Black [並行輸入品]

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エプソンの電子ペーパー時計 WristableGPS

 電子ペーパーは日光下での視認性が非常によい。これは YotaPhone2 をつかっていて実感するところだ。実はこないだ背面から落として背面もヒビだらけになったのだが、それでも見えてるのでそのまま使っている。背面の電子ペーパーに時計を出したままにして置いておくとなかなかよい。では時計のパネルとして使ってる商品もどこかにあるのではなかろうか。ただ電子ペーパーのパネルは安くないので小画面となると腕時計になるだろう。

 電子ペーパーをつかった腕時計というと ソニー の FES Watch があるが、あれはベルトまで電子ペーパーなので実用品というよりは物を愛でる商品だとおもう。もっと実用的な腕時計はないかとおもって探すとエプソンが出してる「スマートキャンバス」というのがみつかる。しかしこれは時計としては妙に四角い。そのうえデザインに凝りすぎている。電子ペーパーであるという点を前面に押し出しすぎて実用品としては不合格な気がする。

 電子ペーパー > 時計

 ではなくて

 電子ペーパー 時計

 みたいなのはないのか? とおもってエプソンの腕時計をみていたらそれらしいのがあった。WristablelGPS の新型だ。

 これ宣伝の中で電子ペーパーということをあまり前面に押し出していない。eInk社の名前すら出してないうえに"Easy View"とかいう変てこな名前をつけて売り出しているが、「電気泳動方式の電子ペーパー」とは明記してあるからeInk社のものを使っているんだろうとおもう。

 なんでそんなことになっているかというと、WristableGPS のブランドの方が古いからだ。アウトドアスポーツ向けのGPS搭載の腕時計が既にあってその基礎の上で画面を電子ペーパーに変えて日光下での視認性をよくしただけだから、電子ペーパーと殊更に言わなくてもいいわけだ。電子ペーパーはバッテリーが持つというイメージがついているからそれを殊更に言うと電池が持つと言わなければならなくなる。電子ペーパーはバッテリーが持つというのは一種の錯覚で、電子ペーパーの特性のおかげでバックエンドを貧弱にしたりスリープさせたままにしても問題ないだけだから、これだけセンサーてんこ盛りの腕時計だとそれなりにバッテリーを食う。"Easy View" とかいう変てこな名前をつくったのも視認性がよいという一点を強調するためだろう。

 一方で、電子ペーパーの長所である「表示の維持に電気がいらない」というのは同時に短所でもあって、「電池が切れてるかどうか一瞬ではわからない」という面がある。YotaPhone2 の場合はちょっと前の時点のBatteryMixの画面がなぜかでてきたりするのでわかるのだが、あれはわざとそうしてるんだろうか。エプソンWristableGPS の中で登山用の時計はまだ電子ペーパーになってないのだが、登山は一歩間違えると命にかかわるので後回しになっているのかもしれない。

 それはともかく、数万する腕時計かー。金銭感覚的には数万する電子書籍端末をボコポコ買うのと大差ないか。むしろこの腕時計の方がセンサーてんこ盛りで凝っている分値付けとしてはまともなのかもしれない。