メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

メッケルの関ヶ原西軍勝利判定伝説

 参謀旅行で関ヶ原に行ったときメッケルが東軍西軍の配置図をみて西軍の勝ちと判定したという伝説があるらしい。ググれば2013年ごろにこのネタが話題にあがっている。もっともこの伝説にはいろいろバージョンがあって司馬遼太郎とか海音寺潮五郎とか歴史系の雑誌が広めたようだ。
 メッケルは参謀旅行で関ヶ原に行ってないので別の外人教師が言ったというバージョンもある。日本人教官なら関ヶ原の勝敗は当然知っているからといことだろうが、今回防衛省の史料閲覧所で資料を眺めていたら参謀旅行の一覧がのっているものをみつけた。そもそも御雇外国人が指導していたころの参謀旅行は関東周辺に限られていた。関ヶ原あたりまで行くようになったのは日本人教官が育ってからだった。何年くらいからかはメモしていないので東海道線開通とかと比較はできないのだがまぁ外人教師は行ってないんだろう。
 まぁしかしそもそもの話をすれば、関ヶ原の東軍西軍配置図なんて関ヶ原まで行かずとも市ヶ谷の学校の一室で描けるものだし、参謀旅行で題材にするなら戦史は当然研究してから行くはずだ。もしそのエピソードがあったとすれば、メッケルなど外人教官の赴任直後、外人教官を試すために見せた奴がいたというところだろうか。「参謀旅行のときに」というのはどっかで話をおもしろくするためにまざった情報だろう。
 こういう「話を面白くするために入った情報」というのは難しい。人に話をするというのは人を楽しませるためにするものだから、話というのは面白くなる方向に動くに決まっている。このメッケル伝説にしても、参謀旅行に行っておらず市ヶ谷の学校でこっそりあったものだったとしても「西軍の勝利と判定した」というだけで面白い。面白いから伝説だウソだと話題になるわけで、面白くなければ誰も話題にしないし多くの人の記憶にも残らない。
 ということで理詰めである程度見当をつけることもできるが、自分はこれ以上調べる気はないからオチはない。以上。