北京の国家博物館に行ってきました。
中国には「愛国主義教育基地」の博物館なるものがあり、そういうところは写真のパネルを中心にした展示がある。まぁ絵本みたいなもんですな。ときどき子供なんかが授業でゾロゾロとつれてこられて教育されているのにでくわしたりもする。
北京の天安門広場に面している国家博物館の「復興の道」展示もそんな感じの使命を負っているらしく、写真パネルが多い。展示を素直に追っかけても共産党が現在どういう歴史を公式なものとしているかわかるのだが、その展示の間に挟まっている大型絵画に注目して歴史観をみることにした。大型絵画のおもしろいところは製作年が書かれていることだ。過去の展示で使われていた絵画が流用されているので何が後から加わったのかある程度うかがえるようになっている。
ということで早速そのリスト。
- 第一部分 中国沦为半殖民地半封建社会
- 第二部分 探求救亡图存的道路
- 第三部分 中国共产党肩负起民族独立人民解放历史重任
- 第四部分 建设社会啊主义新中国
- 第五部分 走中国特色社会主义道路
さて内容の検討をする前に国家博物館の建国後の歴史をならべると、もともとあった博物館を接収し、1959年に歴史博物館と革命博物館の二本建として天安門広場をはさむように建設した新館公開される。1969年には文革で黒線指定をうけて展示の規模を縮小したが文革終了後の1979年に整理して展示を再開。1983年には名義を文革前にもどした。その後2003年に組織合併して国家博物館に、建物も新しくして2010年に新館での展示が始まるという具合。「復興の道」展示は革命博物館の直系ということになる。
展示絵画を製作年順にならべるとこうなる。
- 1959以前
- 列宁宣布苏维挨政权成立 1947 (ロシア人画)
- 群英会上的赵桂英 1951 (印刷物)
- 开国大典 1953
- 南昌起义 1957
- パネル 八女投江 1957
- 延安火炬 1959
- 转战陕北 1959
- 重建起来 1959
- 虎门锁烟 1959 (アヘン戦争)
- パネル 狼牙山五壮士 1959
- 1959後文革以前
- 1969〜1979
- 烧地契 1975
- 数风流人物还看今朝 1977 (毛沢東)
- 80年代
- 兼容并包 1988 (民国の諸文化運動)
- 同盟会成立 1988 (孫文の背後に日本人)
- 2003年組織合併後
- 公元一千九百四十五年九月九日九時南京 2003
- 邓小平南方观察 2003
- パネル 刘老庄八十二烈士 2005
- 現在の新館
1959年に天安門広場の前に革命博物館がたてらてたときには共産党だけの展示しかなく、その後文革までに若干拡張され、文革中は革命展示だけしかなかったのであろうことがうかがえる。80年代には共産党以外の紹介もできるようになり、孫文の背後に日本人が立っているような絵でも展示できるようになった。現在の新館向けのものでは、国民党の活躍も表現できるようになった反面、日本人を憎悪の対象とするものが目立つ。天安門事件の後の1995年からはじまった「愛国主義教育」が浸透した事もあるだろうが、国家博物館になって「革命」に限定されなくなったこともあるのだろう。
まぁしかし「中国への帝国主義の侵略」を代表する絵画が八国聯軍とか円明園とかではなく「旅順大虐殺」だったのは自分にとって衝撃的だった。