メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

新刊案内

 君見ずや出版
 今週は三冊。


 新井芳宗『撰雪六六談』明治25-26年(1892-93)
 新井芳宗(1863-1941)は月岡芳年の弟子。父親が国芳の弟子の歌川芳宗で芳年とは同輩にあたる。息子は芳年の弟子となり、父親の死後二代目歌川芳宗を襲名したという次第。この撰雪六六談は芳年死後にはじまったシリーズで、六六とあるように全36枚を予定していたものの24枚しか出ていない。同時期に兄弟子の水野年方も『年方三十六佳撰』を出しているので、月岡芳年の『月百姿』と並べて雪月花を意図したものであろうか。版元もおなじ。
 几帳面な画風の水野年方よりは豪快味があり、画力も高いのだが、そのせいで静止した絵になってしまう面もある。水野年方が花、新井芳宗が雪とはよい見立てである。
 1880年代の芳年の本の挿絵の仕事をみていると、月岡芳年というより「月岡一門」が担当しているのがわかるのだが、そのなかでなかなかうまく描けているものの落款をみると芳宗であることが多い。この撰雪六六談でもよくわかる

 東京市公園課『東京市史蹟名勝天然紀念物写真帖』大正11-12年(1922-23)
 関東大震災の直前に出された東京の文化財・天然記念物の写真帖。関東大震災で倒壊・焼失したものの写真も含まれており、なかなか貴重な記録。大正11年に第一輯にあたる無印の本が出、翌大正12年に乗せ足りなかったということで第二輯が出ている。史跡や天然記念物を撮るためなので写真を撮る見方が違っており、街角なんかも残っている。墓石の写真も多いのは本の性質上仕方ない。
 各地の大木なんてのも天然記念物として写真に収められているのだが、公孫樹つまりイチョウがわりかし多い。化けイチョウなんてのもある。

 陸軍防空学校編纂『高射砲兵将校陣中必携』昭和13年(1938)
 戦中に高度防空を担った高射砲の初級将校のための参考書。日中戦争の現場でも飛行機が活躍するようになり、飛行機を落とすための高射砲の重要性が高まった。高射砲運用の基本が押さえられた本。
 報告書の書き方の項目があるが、中の地図例などをみると中国方面の戦場であることがわかり、実際の報告から出来のいいのを選んでいるということも推測できる