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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

新刊案内

 君見ずや出版
 今週は3冊。


 月岡芳年『和漢百物語』慶応元年(1865)
 月岡芳年若年のころの作品『和漢百物語』です。百といいつつ26枚ですね。最晩年の『新形三十六怪撰』と好対照になってます。このころの芳年は駆け出しの若造なので、化け物企画の絵を担当したというところでしょう。絵も若さのあふれる内容となってますが、既に晩年の「内面的な物を絵にする」片鱗が見えてます。
 これ国会図書館にあるのは一枚欠けてたので放置してたんですが、ネットにころがってる素材をそのまま売ってるところが出てきて、しかもそこが『月百姿』『新形三十六怪撰』にもぶつけてきていたので、しょうがないので値下げしてこっちからもぶつけに行きました。欠けてるのはロサンゼルス郡美術館の画像で補いました。
 こうしてまた荒野が広がっていくのです

 陸軍省徴募課『野戦鉄道小隊長必携』昭和9年(1934)
 満洲事変後、軍隊規模の急増が予想されるので、まだ招集されていない在郷の将校クラスの教育のために作られたシリーズの一つ。これ一つで指揮官としての基礎知識が得られるようにしてあります。鉄道隊になると路線計画から土木工事、敷設をはじめ、運用から保線まで幅広い分野をカバーしなければならず、その広い分野についての基礎知識を網羅してあるので分厚いものとなっています。昭和初年の鉄道知識の基礎を網羅してあると言って過言ではないでしょう。

 『石山軍記』
 軍記物の中でも浄土真宗本願寺織田信長との戦いを主題にした異色の宗教戦記。主役は鈴木重幸ですな。孫市とかもでてきます。信長の上洛後、京から追いだした阿波の三好一派を抑えるため、現在の大阪城の位置にあった石山本願寺の軍事的な重要性に目をつけた信長が、立ち退きを迫ることからこの宗教戦争がはじまるというもの。戦国時代の裏の覇者と表の覇者が正面からぶつかった戦争ともいえます。本願寺を通してみると信長の戦争がよくわかる。
 石山軍記はもともと真宗の信徒を客とみこんでつくられたもので、その作者も明らかではありません。明治中期に「今古実録」シリーズの中の『参考石山軍記』としてまとめられ、それがそのまま早稲田大学の『通俗日本全史』におさめられたものから抽出したのがこれ。「今古実録」の方が挿絵もあってよいのですが残念なことにひらがなが統一される前なので活字も異体字が入っててそのまま出しづらい。『通俗日本全史』の方は大正の出版物でひらがなも現代人の読める水準なのでこれを底本にしました。