昨日の日記にあるような調子で今週はあんまりやってなかったが、せっかくなので初期に出してこっちでは案内してなかったものを案内してみようかとおもう。
月岡芳年は歌川国芳門下で幕末から江戸前期の浮世絵・錦絵の大家。神経質な描線が時代を反映してます。残酷絵とかで有名ですね。
芳年物ってそこそこ出るんじゃないかとおもってたけど作ってみたらそれほど出ず、電子書籍業界の厳しさをおもいしったというもの。月百姿が時々出る程度かな。
中国物
『昭和19年のシルクロード』昭和19年(1944)は『西北支那』を改題したもので、1980年代にNHKシルクロードでとりあげられた地域とおんなじなのでこういうふうに改題してみたけど、今出すなら改題しないな。戦前の中国ものでは全然とりあげられなかった西域を取材したものでなかなか珍しい写真もある。
井上紅梅『酒・阿片・麻雀: 井上紅梅の中国嫁日記 』昭和5年(1930) 1920年代「支那通」井上紅梅の中国での生活を書いたもの。中国嫁日記という副題をつけたが、性格には日本人婿日記になる。最後の「阿片吸食體驗記」は当時のアヘンの状態がよくわかるもの。
後藤朝太郎『土匪村行脚』昭和12年(1937) やはりこれも戦後「支那通」として忌避された後藤朝太郎だが、この人はもともと学者だったのが「真実の中国を知るため」各地を旅行しまくった人なので、文学畑の井上紅梅ほどはただれていないどころか最近は中国で好意的に紹介されることもある。ただし支那本の著述で生計を立てるようになった人で濫作のきらいがある。この本は戦前の中国本ではあまり紹介されることのない中国の地方を紹介している。
波多野乾一『延安水滸伝: 毛沢東と中共幹部銘々伝 』昭和16年(1941) 『赤色支那の究明』から読み物性の高い毛沢東の伝記と「延安水滸伝」中共幹部銘々伝をぬきだしたもの。当時の中国共産党は軍事的には日本軍から全然相手にされていなかったが、その中国共産党を研究し、危険性をうったえるもの。当時中国共産党についての正確な情報を得ることはなかなか難しかった中でここまでまとめたのはたいしたもの。
東亜経済調査局『昭和四年 支那排日教材集』昭和四年(1929) 当時の中国は「半植民地」と形容されるような状態であったものの、そのころと今と案外言ってることは変わらないです。一般には反日教育は日本との戦争のせいとおもわれてますが、その前からそれに類することをやっていたことを紹介。
チベット物
青木文教『秘密之国 西蔵遊記』大正9年(1920) 青木文教のチベット滞在記。西本願寺の紹介で正面から堂々と入っているので河口慧海とはまたちがった角度から見ることができます
河口慧海『西蔵旅行記』上下 明治37年(1904) 言わずとしれた冒険譚のチベット旅行記。これは今でも出てるのでまぁ原本の雰囲気を味わいたい人向けですかね。廃仏毀釈を経て沈滞ムードの仏教界では刷新の動きがありインド仏教の研究のためチベットに伝わった経典が求められていた。外人に対し門戸を閉ざしていたチベットへ潜入三年の僧侶・河口慧海の冒険譚で非常におもしろいです。