メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

国会図書館デジタルコレクションと鏑木清方

 江戸の浮世絵師は読本小説の挿絵書きが収入の大きな柱だったわけで、それは明治大正になってもかわらず、月岡芳年門下は小説の挿絵書きを生業としていたわけですが、その流れの有名な人たちの没年を調べてみてビビった。

名前 生没年 死後51年 死後71年
月岡芳年 1839-1892/6/9 1943 1963
水野年方 1866-1908/4/7 1959 1979
鏑木清方 1878-1972/3/2 2023 2043
伊東深水 1898-1972/5/8 2023 2043
岩田専太郎 1901-1974/2/19 2025 2045

 岩田専太郎は戦後も長く死ぬまで第一線で活躍していたから有名で、専門の美術館があるくらいだからわりと調べがつきやすく、この人の挿絵がのってる本は国会図書館デジタルコレクションで一般に公開できない。人気の売れっ子だからあちこちに描いてたりしてもう大変ですね。吉川英治の「鳴門秘帖」、これが吉川英治にしても岩田専太郎にしても売れっ子にのしあがった出世作なわけですが、吉川英治著作権が2013年に切れても岩田専太郎著作権が切れていないので、挿絵付きのいちばんいいものは公開されない。
 まだ岩田専太郎はいいです。大正末から活躍したので著者自体も案外長生きしてたりする。まぁつまりここから本題なわけですが、岩田専太郎と年があんまりかわらない伊東深水はともかく、鏑木清方がものすごく長生きしている。この人は..明治30年代から活躍しているわけで、あちこちに挿絵描いてるわけですね。しかも有名ということはいいものに挿絵を描いてたりするわけですね。やばい。全然関係ないけどこの人も鎌倉に専門の美術館があります。
 国家公務員一種様御勤務の国会図書館といえども人間様のやることですから調査にモレがあったりします。特に文字化されていない挿絵... これはやばい。こないだ国会図書館デジタルコレクションから落としたPDFをいじくっていて、これ「清方」って描いてあるから鏑木清方の挿絵なんじゃね?ということに気づき、「これ公開していいの?メール」を国会図書館の係におくってみたら速攻で公開停止になっていた。やばい。
 国会図書館が、挿絵にも著作権があって無名もしくは没年不明のものは著作権が確定できないから非公開、ということに気付いたりしたら今でもそのルールで公開されてないものがあるのにさらにその範囲が広がるという大変なことになるからこんなことは公言しない方がいい。

 ということで、
「同じ本なのに一方は館内限定で一方は公開」
と同じレベルで気付いても知らないフリをした方がいいことがある。





20140621の夜追記:
 デジタルライブラリではなくてデジタルコレクションでしたね。直しました。

収録資料の著作権著作隣接権)は、各資料の著作権者(著作隣接権者)に帰属しています。公衆送信権についての権利処理が完了したものについては、インターネットでの提供を行っています。

 国会図書館デジタルコレクション、著作権者の没年不明だったりすると、権利処理未完了ということで一般に公開されません。文化庁長官の裁定を受けて一定期間の公開を許されているものはあります。
 たとえばこれ↓。
国立国会図書館デジタルコレクション - 新よし原細見記 : 写真肖像入
 明治15年(1882)に出ているものですが、裁定で公開許可されているだけで、その期間をすぎるとまた館内限定とかになるという建前です。
 不明だから公開されてない例はこれ↓。
国立国会図書館デジタルコレクション - 山国十景
 大正3年(1914)にでたものですが、これも館内限定です。
 十景を選定したので、それを詠みこんだ漢詩や和歌を新聞で募集し、あつまったものを纏めたものですが、こういうのの場合、編者だけでなくそれぞれの詩や歌の作者の没年の確認が必要になります。まぁ事実上不可能ですね。そういうわけで館内限定なわけです。たぶん雑誌の多くが館内限定なのも同じ理由によるものでしょう。なんとかしてほしいですね。
 100年過ぎてたら著作権なんかないも同然だろとおもってたら、鏑木清方みたいな例があるわけで、いやービビりますね。