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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

KDPで売ってくれない本

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 今週作っていた本のよごれが半端ないもので、全ページに斑点状の汚れがある。小冊子だからそんなに時間かからないだろうという甘い見通しではじめたものの、毎日発掘から帰ってから寢るまでの短い時間では到底終らず、結局土曜までかかってしまった。

 この系統のよごれがでるスキャンは普通の場合、本の周りとか最初の方と最後の方にでることが多く、数ページ掃除したらおわりなのだが、今回の本は小冊子でかつ、紙が薄いのが原因のようで、全ページ掃除せねばならなかった。小冊子でもものすごい時間がかかることがわかったのでこういうのは次からパスする。

埴輪

埴輪

 ということで今週あたらしくでた本は『埴輪』だけ。前の日曜につくったのだが、実際にはもう一冊つくっている。それが今日のお題の「KDPで売ってくれない本」になった。

 これは明治44年当時文部次官だった岡田良平が服喪規定である服忌令(ぶっきりょう)を守るよう通達を出したのに応じて、参考書などを出していた「教育学術研究会」が出したもの。服忌令というのは服喪規定であるが、その実、江戸時代、幕府が出した武家向けの服喪規定である。明治維新ののち、公家のものと武家のもののうち公式には武家のものを採用することとなったので、それが生きのこった。しかし明治も時代が下ると守らないようになってきたので岡田良平がそんなものを出したわけ。おそらくこれ、現代にもなんらかの形で影響をのこしているだろう。そういう尾てい骨のようなものがあったという事自体にワクワクするのでKDPで出したくなったのである。

 ところがこれ、KDPでは売らせてくれないのである。一応、理由は「著作権」らしいが、「教育学術研究会」という団体名で出してるのだから団体の著作権になり出版から50年しか保護されないもの。引用されているものも政府の出してるものなので、出版から100年以上たった今、著作権を云々するようなものではないはず。このレベルでダメなら、既に出しているもののなかにダメなものはいくつもある。だからこれはKDPの方で売りたくないものなのだろう。

 他にはこの『修験宗意偈和解』も売らせてもらえない。最初のころ試験的に作ったもので、江戸時代的和文御家流の文字そのまま、字おこしもせず出してみたら通らなかった。著者の「五鬼継義円」なる人物の没年がわからないからだが、これも内容でダメになったのだとうたがっている。異教的なものがダメなのかもしれないとおもって『密教百話』というのを出してみたらこれは通った。キリスト教でちょっと毛色の違う正教のものを出してみたら通った。怪しい四柱推命の本を出してみたらこれも通った。怪しい忍術の本を出してみたら通った。うーむ。基準がわからんな。「封建道徳を助長する」とみなされるものか?そういう浅薄な発想の人がいてもおかしくはない。

 今まで著作権がらみでなかなか販売を認めてくれなかったものに「立川文庫」「ちりめん本日本昔話」の各シリーズがある。これも対応がまちまちで、あるものはぶっとおしであるものは何回もやりとりをしてようやく通った。一番時間がかかったのはこのかちかち山。

Kachi-Kachi Mountain (English Edition)

Kachi-Kachi Mountain (English Edition)

 かちかち山はたぬきがおばあさんを煮てばばあ汁をつくっておじいさんに喰わせたり、うさぎがたぬきを何度も罠にはめ、最後には泥舟で溺れかけているたぬきを舟の櫂でたたき殺すシーンもあり、さらにそれを見ておじいさんが歓喜していたりする。この本が最後まで残ったのは、アメリカ的基準からすると子供に見せるものとしては内容が残虐すぎるせいではないかとおもっている。

 さて、出版社を自分で作るとしたら、どれくらい出版するかの見通しを立てて本にISBNを付与する権利を買わなければならない。出版社というのはその権利を持っている組織である。KDPを利用するという事はアマゾンによって電子書籍用のISBNを出してもらうということだ。(ここのところ勘違いしていた。ISBNでもなんでもない。アマゾンのKindleに出稿してるだけ。) ただ、KDPが普通の出版社とちがうのは、普通の出版社にいるような編集者がいない事だ。編集者がやってくれる仕事のうち、本に直接関係のある作業、原稿のチェックや校正・デザインの管理なんかを自分でやって製本までしてアマゾンにおさめるのが、KDPの利用者がやっている事である。顧客というのはお金をくれる人のことを言うのだが、アマゾンがKDPを利用して本を出す人をも顧客と呼んでいるのは、そういう普通の出版社がする労力を自分でする対価としてISBNを買っているようなものだからかもしれない。(アマゾンに出稿してるだけ)

 ではアマゾンのKDP部門がやってる出版までのお仕事はなにかというと、推測するに著作権の確認と発行の許可不許可の判断であろう。まーつまりKDPの顧客どもにくれてやるISBNの許認可の権を握るという(アマゾンへの出稿を認めるか否かを判断するだけ)お役所的仕事だ。そういうものであれば仕事をしていることを示すために、ときどき不許可を出さねばならない。自分の場合、国会図書館著作権切れと認められるものを利用して100数冊出したうち2冊がダメだったから2%弱の率で不許可が出るということだ。たぶんKDPに提出されてくる本のなかには想像を絶するレベルでひどいものがかなりの割合あるだろうということを考えると、2%弱というのは低いのかもしれないがそこはわからない。

 KDPがアメリカの役所みたいなものだとおもえば、対応がバラバラでレベルがまちまちなのもなんとなく納得できる。アメリカの会社だからそういうところの客あしらいの水準は期待するべきではないのだろう。さぁ次はハンコすんなりと押してもらえるかどうか。そう考えるとワイロの問題とか普通に起こりそうなので担当がグルグル変わるのもさもありなんというべきか。

 以上すべて妄想で書きました。