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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

新刊案内

 君見ずや出版 - KimiMizuya -
 寒いです。雪です。ということで今週は11冊。やはり一日二冊ペースも厳しいようで。

 雅楽講究会『舞楽解説』昭和7年(1932)
 伊勢神宮で御神楽を実演する立場から雅楽舞楽中心に解説したもの。雅楽は輸入品で国粋ではないという指摘に対抗する意味もあってか歴史的に日本においてどういう変化があったかということを重点的に書かれています。まぁしかし広い範囲の音楽が入ってきてますな。主に西域の方から。唐の前期は安定していたので貿易が発達し文物が広く交流していたということでしょうが、ササン朝崩壊がすごいインパクトだったんでしょーなぁ。

 軍事学指針社『戦術原則図解百題』昭和8年(1933)
 戦術原則というのは一種の戦闘マニュアルなのですがその運用の上で疑問点となるようなところ百点を図解して解説しているもの。前進攻撃防衛退却とひととおりあります。戦闘もこういうレベルになると詰将棋のような雰囲気がでてきます。

 小室翠雲『画集をかねた新南画の描き方』昭和8年(1933)
 南画というのは中国の文人画のことですな。経済の中心江南の方で流行ってたから南画。日本も中国の流行を真似してやってたのが明治維新となり洋画の輸入日本画の勃興となり、南画は流行らなくなった。流行らなくなったといっても余勢はあり、その流れの戦前最後の巨匠が小室翠雲。この本は日本中国の昔の名人の作と本人の作例を交ぜながら素人向けにわかりやすく解説したもので、ひととおりのことがわかるようになります。
 そういうと、南画の風景ってあれ概念的なもんだとおもってたんですが、浙江省の山奥なんかをバスで移動するとそのまんまの風景が展開していて、リアルな実景なんだとわかったことがあります。この程度のことすら日本にいるとわからんものなんですな。

 照明学会照明智識普及委員会 『京都・大阪・神戸 明りの名所』昭和8年(1933)
 昭和初期の夜の街の照明はどんな感じだったのか。それがわかる珍本です。結構あかるいですなー

 王羲之『集王聖教序』
 褚逐良『孟法師碑』
 手習いのスタンダードです。行書の集王聖教序(集字聖教序)、楷書の孟法師碑。うーむ。とりあえず定番を並べてみたけど売れるのかねこれ。中央書道協会というところから昭和15年(1940)にでたもので、字を拡大して手本にしやすくしてます。今でも売ってますねそういうの。


 東洋製鋼『鋼索と鋼線』昭和11年(1936)
 ワイヤーロープのカタログです。種類があっておもしろいです。

 伊藤晴雨『美人乱舞』昭和7年(1932)
 今となっては責絵だけで有名な伊藤晴雨の小画集。発禁処分をくらってます。そんでこの国会図書館にある本は問題箇所が破れてなくなってるんですね。当局が処分したとするならこんな中途半端な処分はしそうにないので、たぶんマナーの悪い閲覧者が破ってもって帰ったんでしょうなー。一般に公開するとこういうことがおこるからよくない。残ったところの絵も現代でも通用しそうな絵です。

 伊藤晴雨『画家生活内幕話』昭和5年(1930)
 皮肉と揶揄でみちみちた画家生活内幕話。心底真面目なんだということがわかります。真面目なところが捨てきれず隠せないからひねくれてしまうようで。初心者向けに画家になる道を示した「絵描きとなる素質」。「一夜の内に絵描きとなる法」を説いてるわけですが、どうみても一晩ではできない。「画家玄関番の手記」は画家の内幕を暴露したもの。自分さえもネタにしてます。「画家未来記」は未来を想像したものですが、現代のインターネット社会を予見したような内容もあります。

 岡本敬之助『相撲四十八手』明治27年(1894)
 岡本敬之助というのは岡本綺堂の父親で、戊辰戦争では幕臣として幕府軍にしたがい、維新後は英国公使館に勤務したという人です。その一方で半渓という号で活躍してます。この本は図解相撲四十八手の編集をたのまれてやってみたら図解部分の他の故実をいっぱいあつめたのが膨らんで「相撲宝鑑」になったというもの。四十八手全部について図解と説明があるのがこれだけだったので作ってみました。図だけ、説明だけ、とか全部そろってないのなら他にもあったけど。

 吉田晴風『尺八練習百曲集』昭和11年(1936)
 尺八読本の姉妹本です。尺八読本で尺八に慣れてからこの練習曲集で練習するといいんじゃないでしょうか。結構はばひろい内容の選曲です。買う人いるのかな。