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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

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君見ずや出版

 11月初に作った『言海』が意外と出ているので、こういうの売れるのかとちょっとKindleの読者層を見直したが、今日ぐぐってみたら辞書編纂を背景にしたアニメやってるらしい。なんだ。やっぱりそういうのしか売れないのか。なら今回の『和英語林集成』とか売れるわけがないな。ある程度目次つけた画像の辞書って紙とデジタルの両方の利点をもってて便利だとおもうけどな。そうおもうのはやっぱり紙で育ってからデジタルを覚えた世代だからかもしれんが。


ヘボン『和英英和語林集成 第五版』明治27年(1894)

 宣教師ヘボンによる『和英語林集成』は江戸時代最末年の慶應三年に成立したもので、その後増補改訂を重ね、明治19年には第三版がで、タイトルも『和英英和語林集成』となりこれが決定稿となった。この第五版は小修正をしたもの。日本語の西洋語による辞書としては17世紀初頭の『日葡辞書』に次ぐもので、日葡辞書が中世末近世初の日本語の重要な資料であるのとおなじくこれも幕末から明治初にかけての日本語口語をうかがえる重要な資料である。また日本語辞書としての規範を日本に示し、明治に進行した日本語の正則化に大きな影響を与えている。第三版では明治になってから急増した漢語語彙を増やしている。
 これのつかいかたとしては例えばこういう項目をひいたりするとおもしろいです。

>SHINOBI シノビ n, Disguise, concealment; a spy, or disguised person : - wo ireru, to send a spy; - ni sode wo shiboru, to wring the tears from one's sleeve unperceived by others ; - de aruku, to walk in disguise or incognito ; - na mono, a spy : - no jutsu, the magic art of concealing one's self from the sight of others

 英和の方の項目にはこうある。

>SPY, n, Shinobi, kanja, yokome, ommitsu, metsuke, me-akashi, monomi, kanchō


 『言海』ともども使えるものです。英語の方の語彙も19世紀だけあって現代ではあんまりつかわないようなのもあったりします。


栗田書店出版部『隠語辞典』昭和8年(1933)

 隠語の辞典です。学生語・不良少年語・俗語・的屋、縁日商人語、花柳界、犯罪語、僧侶語に大きく分類されてます。たとえば最初に
あるのが

>あいかた(相方 花) 游客の相手になる娼妓のことをいふ。

 とか

>いさましい(俗) 不良性を帶びた女子のことをいふ。元氣がよすぎて物凄いといふ意味。

 とかそんな感じです。


警察思潮社編輯局『捜査資料 犯罪実話集』昭和7年(1932)
 昭和初の空気を感じさせる犯罪実話集。警察側の視点で各種犯罪を解説しているが、凡百の窃盗や強盗などから、共産党・サンカ・朝鮮人労働者など当時特有の問題までいろいろそろっていておもしろい。


 あれも出さねばこれも出さねばとおもいつつも手がひとつしかなく金にもならないので何事も思いのままにならない世の中よ