メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

国会図書館の浮世絵の画質

 君見ずや出版 - KimiMizuya -

 アマゾンで商売すると評価をつけられることがあるが、今回つけられた☆1はなかなか辛辣だった。

このKindle本は買わない方が良い
浮世絵(錦絵)は初摺り約200枚は絵師立会いで摺られたようだ。ふわふわした雲や微妙なボカシも絵師の指示で摺り師は表現した。しかし、後摺りになると段々手抜きが行われ、作品の質が低下する。
世間に広く発行されている広重の大作「名所江戸百景」は大判の図書はもちろんのこと、電子書籍でもできる限り初摺の絵を掲載して、広重の絵心を伝えようとしている。
そこへ行くとこの本は同類の電子図書の中で一番高価であるにもかかわらず、かなり後からの後摺だらけで、ひどい品質だ。「駒形堂吾妻橋」の空は真っ黒だ(初摺ならばあてなしボカシの雲が浮ぶ)。「両国花火」も花火の明るい広がりが消えている。その他の絵もぼかしがなくてべた塗りだったりする。例を挙げればきりがない。
広重の「名所江戸百景」は150年前の江戸を描いた肖像画といわれる。
こんな本では広重は絶対満足しない。これほどヒドイ広重の画集はない。

 ぐぬぬ。そう言われてみかえしてみると実際ヒドイ。うーむ。国会図書館に所蔵されている本は納本制度で納入されたものが大半だが、寄贈・購入・国際交換という経路で入る本もある。江戸時代に納本制度があるわけないので浮世絵などは、一度市中にでたものが寄贈とかの形で図書館に入ったものなのだろうが、浮世絵の寄贈品がよいものであるとはかぎらない。この広重の名所江戸百景は二セットあるがどちらも似たようなものなので後刷の方なのだろう。国会図書館は美術館ではないし後刷にもそれなりの価値はあるので解題をつけずに公開してるというわけだ。
 よし。ヒドイのはわかった。なぜ解題がついてなかったのか今ごろ知った。だからあんまり売れないのか.... まぁしかし自分としてはこの批判に対し、販売停止・放置ではない方法で答えることにした。wikipedia にあるパブリックドメインの画像(大半は Brooklyn Museum 由来)を引用の形でとなりのページに貼り、比較できるようにして別の値打ちがでるようにしてみた。

 こうして比較すると本当にヒドイですね.....(汗 あ、後刷りの方が一般には広まって受容されたのはこっちだから!(ごまかし) れ、歴史的価値(もう言うな

 それはそれとして国会図書館デジタルコレクションの浮世絵、明治以降のものについてはデジタル化の壁がある。浮世絵は江戸時代終焉とともに死滅したわけではなく木版印刷とともに死滅したわけで、明治にはいっても出ている。そもそも印刷された画集というジャンルは印刷技術のトレンドに左右されながらも、絶えることなく出版されていて、そんなのが国会図書館では「貴重書」にも分類されず普通に図書扱いになっている。国会図書館はそういう画集をデジタル化する際に白黒二値とかグレースケールでデジタル化することを平気でやっていた。勘弁してほしいれす

 いやーしかし。随分前にも記事にしたけど、こうして売り物にしようとして探すと本当にひどい。明治以降は納本制度があるし大量印刷の時代だからいいものが入ってるはずなのだ。そして忘れ去られているかもしれないが絵の技術的には江戸時代よりも進んでいるのだ。それがこんなんだから。

British Museum - Image gallery: Seitei kacho gafu 省亭花鳥画譜 (Seitei's Bird-and-Flower Painting Manual)

国立国会図書館デジタルコレクション - 省亭花鳥画譜. 2之巻

 現代では無名かもしれんけどな!
 図書扱いの画集は一部カラーでデジタル化されてるが、ほとんどは死んでいる。まぁあと売りものにはしづらいけど地図も細部読めないしパンフレットの類も細部が読みにくい。それからデジタル化の際の不手際で真ん中がよめないのとかブレてるのとかある。なんとかならんのか。