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君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

新刊案内と川瀬巴水をめぐる消耗戦

君見ずや出版 - KimiMizuya -
 先週にひきつづき大英図書館の画像につける説明のためにダラダラしらべまくったあげく結局今日には間にあわなかったのですが、その一方で消耗戦を戦っていました。年末12月28日、いきなり売りあげが爆発して、一度おさまったあとしばらくよく売れてた本、それが『川瀬巴水版画集1』!

 ちなみに2もあります。

 あと売れたといっても数十冊程度です。
 なんでそんなに売れてるのかそのときはよくわからなかったのですが後でググってわかったのが正月の間高島屋日本橋店で展示会があったこと。日曜美術館で紹介されたこと。おぉ。おかげでおもわぬお年玉がもらえてホクホクしていたわけですが、まぁもとが国会図書館の公開画像を整形しているだけなので、だれでも似たようなものが作れるわけです。というわけでパブリックドメイン叩き売りの雄、サキ出版がめざとく見付けて半値の200円で同じものを出してきました。このサキ出版はパブリックドメイン売りの人たちの中ではちょっと異彩を放っているところで、以下の様な特徴があります。

  • つめこめるだけつめこんだテキスト (190作品とか240作品とか)
  • Amazon が決めた限度ぎりぎりの最低価格で叩き売り (3M以下は99円 3M以上は200円)
  • ちょっとセンスがおかしい表紙 (例: 黒地に赤文字、極端にパースをつける)
  • ドぎついタイトル (例: 『岡本綺堂 190作品⇒1冊に収録』)

 もう「焦土」とか「蝗」とかの大陸的なイメージしか浮かんでこないような粗暴な商法ですが案外仕事は丁寧で、wikipediaまるうつしの説明とかも、センスはともかくソツはない印象があります。最低価格で攻めるのも、暴利を貪らないとも言えます。
 川瀬巴水版画集を電子書籍にするにあたっても、結構画質のいいところを狙って画像を変換しており、そういうところはなかなか好感のもてるところ。ただHTML目次はついてない。つけ方はおしえない。

 サキ出版の川瀬巴水版画集1は1/8登場。その日の君見ずや出版の売りあげは川瀬巴水ブームがおこる前の水準に減少。実はこのときになってもなぜ売れてたのか原因を究明しておらず、正月だからうれたんだろう、正月過ぎたから減ったんだろう程度におもってました。で、大英図書館の画像の作業をやってる間にちょっと検索してサキ出版のものを発見。そして原因も究明したわけです。
 せっかく今まで全然売れないのをがんばって続けてきたのに、ちょっとくらいご褒美があってもいいじゃないか。なのにこやつ....横取りしやがって...とそのときはおもってまずやったのが対抗値下げ。そして1をつくれるということは2もすぐでるはずなので2がでる前に2の方も値下げ。そのうち合本したのが出るのは目に見えてたけれども、とにかく大英図書館の方を片付けないといけない。
 そうこうしてるうちに1/11に2が登場。こっちが対抗値下げしたのに気付いたのか、1/13には『復刻版 川瀬巴水版画集1+川瀬巴水版画集2』というセンスのタイトルで合本が登場。うーむ。
 そうこうしてるうちに一昨日1/14ようやく大英図書館のものにケリをつけたので、どうするか考えた。同じことをしても面白くない。ファイルサイズを3M以下にして200円の下の99円を狙ってやろう。ということで東京を描いたものを抜きだして東京をグルリとまわるように配列しなおし、画質もギリギリまで下げて3Mにおさまるようにしてつくったのがこれ。

 どうだ! とおもったのも束の間、タイミングの悪いことに Amazon が1/16つまり今朝、おもしろい通知を送ってきた。

この度、Amazon.co.jp で販売する電子書籍の希望小売価格の要件が変更になりましたことをお知らせいたします。
これまで 35% のロイヤリティ プランで3 MB を超える本を販売する場合、最小希望小売価格要件は 200 円でしたが、99 円 まで引き下げることができるよう変更いたしました。

 いやぁ。世の中には本当に間の悪いことってあるもんですね。わざわざ画質を下げて画像を省いたのは何だったのか。また作りなおさなければならない。
 ちなみにサキ出版も合本したのをさっそく99円に下げてきてます。いやーそうですよね。同じ立場だったらそうします。

 今週の消耗戦の様子はここまで。来週は? まぁいちおう次の手の腹案はある。でももう作ってもどうせ売れないだろ。もう波は過ぎたんじゃなかろうか。こうやってよく売れるものは、パブリックドメインなんだからみんな使ったらいいとおもいます。共享共享。
 将来的にはパブリックドメイン戦場は99円の焦土戦術が横行、チマチマ作ってた人たちは雀の涙程度の金しか手に入らないことに恐れをなして続々と焦土から脱出、システムを提供している Amazon だけが残された広大な焦土から養分を吸いとっている姿が目にうかびます。どこの世界も胴元が一番もうかるんですよ。

バカ話はともかく、今週の新刊は他に一冊あります。
樺太庁樺太写真帖』昭和11年(1936)
戦前日本の樺太庁がつくった樺太の写真集。特別附録として2013年9月、サハリン州へ旅行に行ったときの写真を数枚つけておきました。

ちなみに大英図書館のがでなかったのは例の著作権の問い合わせメールがきてたからで、その処理がおわった今晩くらいに出るのではなかろうか。